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心理・チュートリアル通信「語句説明&論述問題攻略のポイント」(3)

2022年度
河合塾KALS 臨床心理士指定大学院講座 チュートリアル通信
チュートリアル通信では、大学院に合格したKALSのチューターが、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報や、心理士事情など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。
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語句説明&論述問題攻略のポイント(3)

新大阪校チューター:越川 

こんにちは、河合塾KALS新大阪校チューターの越川陽介です。
今回は専門科目についてアウトプットを意識した学習方法について紹介したいと思います。
今回の目次は以下のとおりです。

  • アウトプットを意識した学習方法って?
  • 具体的な学習法①:用語説明カード(ノート)
  • 具体的な学習法②:出題者になってみる
  • 具体的な学習法③:過去問解説シートを自分で作る
・アウトプットを意識した学習方法って?

アウトプットを意識した学習方法とは一体どんな学習方法でしょうか?ここでは、「練習問題や過去問を解く」、「用語説明を実際に紙に書いてみる」、「覚えたことを人に教える」...これらの行為をアウトプットと想定してお話を進めていた期待と思います。
すでにみなさんご存知かと思いますが受験勉強には、それぞれインプットとアウトプットが重要になってきます。

  • インプット...単語を覚えたり参考書を読むなどの知識を自分の中に溜め込むような学習方法
  • アウトプット...問題を解いたり言葉に出してみることで記憶している知識の定着を確認するような学習方法

そしてこのインプットとアウトプットは、勉強の進度や試験日までの残り期間の具合によって適切な割合が変わってきます。この記事を読んでいるあなたがどのような背景をお持ちの人で、その今がどのタイミングかによっても異なります。

例えば
表1.大学院受験とインプットとアウトプットの比率
対象時期比率
初学者受験勉強を開始初期インプット>アウトプット
現役心理学部生ある程度知識が身についた時期インプット<アウトプット
本番直前インプット<<<<アウトプット

概ね、このようになるかと思います。これを読んでいるあなたが大学3年生であれば、まだアウトプットを意識しすぎるよりはむしろインプットを通して専門知識を身につけることが先決でしょう。一方で大学4年生の6月頃となったら、そろそろアウトプットを中心に問題を解いていきながらインプットを行なっていく学習方法に変えていくのが良いかもしれません。そして本番まで一ヶ月を切ったら、過去問を時間通りに解答してみたりと本番に合わせて解答すること自体を学習していく必要があるでしょう。
このように自分の勉強の進度や試験日までのタイムスケジュールなど、試験日までの全体像を大まかに把握していることが受験勉強、なかでもアウトプットを意識した受験勉強でも大切になります。

もう一つ、受験生がよくしてしまいがちな落とし穴をお伝えします。
それは、
「インプットにばかり固執してしまってアウトプットまで辿り着けない」
です。
自分に知識が定着しているか不安になってしまっている方はいませんでしょうか?
なかなか自信をつけることができず参考書を読んだり用語の暗記ばかりに時間を費やしてしまい、過去問を解いたり、語句説明を実際に白紙に書いてたりアウトプットを中心とした受験対策ができないまま試験直前を迎えてしまう、ということが起こりがちです。
もしかしたらこのような方の背景には、「アウトプットは知識が身についた人がするもの」という考え方があるのかもしれません。つまりインプットとアウトプットを完全に分断して考えてしまっているということです。もしそうであるのなら「アウトプットしながらインプット」という考え方を持ってもらえると楽になるかと思います。問題を解いてみて間違った問題を中心に解説を読み込む。そこで解答に辿り着くまでの道筋や必要な知識を覚え直す。また問題を解いてみる。というサイクルを作るのも一つの方法になるかもしれません。ちなみに私は臨床心理士試験や公認心理師の試験の際はこの「アウトプットしながらインプット」を中心に行なってなんとか試験を乗り切りました。

・具体的な学習法①:用語説明カード(ノート)

それではアウトプットについての考え方がわかったところで具体的な学習法について紹介していきましょう。
その一つ目が用語説明カードです。「用語説明カード(ノート)」は、その名の通り、専門用語の説明をカードやノートに自分で作っていく学習方法です。
用語説明カードの概略は以下のとおりです。
入試問題で多くの大学院が出題する形式があります。それが「用語説明」です。専門用語が提示され、200字で説明しなさい、の様に字数を指定してその用語を説明するタイプの問題です。この問題では、提示された専門用語にとって必要なキーワードを的確におさえて、限られた字数の中で全体を上手にまとめて説明できることが解答の要になります。このためには、単に用語を暗記するのではなく、自分の言葉でまとめいく作業がとても有効です。

  1.  説明の頭に定義を明記
  2. 論理的である様に心がける
  3. 分野別に分ける
  4. 英単語もセットで覚える
  5. 繰り返し練習する
  1. については、専門書や心理学辞典や心理学事典、ハンドブックなどを参考に定義を書いてみるのがオススメです。複数の参考書をみると共通で書かれている内容と、参考書によっては書かれていない内容とに分けることができます。共通で書かれている内容を中心にまとめていくと、知識に偏りが生じなくて良いでしょう。
  2. については、「相手にわかりやすく説明する」ことを意識して、理解してもらうにはどんな順序でまとめたらいいのかを考えてみましょう。
  3. については、ランダムに用語をまとめていくと、用語同士の繋がりがなく、膨大にある専門用語を全部まとめるなんてとても無理だと感じてしまいがちです。分野別に分けてまとめることによってカード同士の繋がりなども明確になり、専門用語のまとめをして行く中で、その分野について体系的に学習することにつながっていきます。
  4. については、入試では英語の試験を課す大学院が多くあります。英語対策を兼ねて行うことで効率性を上げて行くことができます。
  5. については、まとめた内容を自分のものにするためには繰り返し行うことが大切です。回数を重ねることで記憶の定着を図りましょう。
アウトプットを意識して単語カードを使用するのは特に5番の部分です。もちろん1-4までの過程はインプットをするために、そして積極的な勉強のために必要な過程です。その過程で得た知識をさらに定着させるという意味でこの5番が役に立ちます。
学習方法としては、例えばランダムに単語を指定して白紙に説明を書くことを繰り返してみると良いでしょう。それにゲーム性を出すのであればタイムトライアルをしてみるのも良いでしょう。200字説明を何分で書くことができるか?なんていうふうにしてトライしてみると、本番の時に語句説明にどのくらいの時間を割けるかが明確になり、本番の解答のストラテジーを組み立てるのに役立つかもしれません。
しかし、机に向かって書いている時間がない、という時もあるかと思います。そういうときは単語を声に出して自分に説明してみましょう。想像の中で誰かに用語の説明をする気持ちになって声に出すことがアウトプットにつながります。電車の中や移動中に誰にも気づかれないくらいの声量でチャレンジしてみてください。

具体的な学習法②:出題者になってみる

また、アウトプットを意識した学習法として自分で問題を作ってみることも自身の学習の深まりにつながります。なぜなら、問題作成はその分野のことを理解できていないと非常に難しいからです。実際に作ってみるとすぐにわかるかと思いますが、問題を作る過程で何を知っている必要があるのだろう?この分野において大切なことってなんだろう?と思考を巡らすことでしょう。そうすると改めてその分野のことを見渡したときに、「これってどうだっけ?」など自ら疑問を持って主体的に学びに行く姿勢を保つことができます。単に参考書を読むだけの作業だとどうしても受身的な学習の仕方になってしまうため、モチベーション維持が大変です。その点でも効果的です。
そうして自分で作成した問題を解答することもアウトプットになります。またそれだけでなく、自作した問題を友達同士で交換しあって解答し、解説をしてあげるというサイクルも効果的です。なぜならこれらのサイクルには冒頭で説明したアウトプットの作業である、問題の作成、自分で解答、説明をする、を網羅している勉強方法になるからです。

具体的な学習法③:過去問解説シートを自分で作る

最後の方法は志望校が決まっている人向けの学習方法です。
過去問はあるけれど答えがわからない、ということは多いと思います。そうであれば自分で解説シートを作ってみるのもアウトプットを意識した学習方法の一つになります。上述した積極的な学習にもつながり「過去問の解説シートを作る」という小さな目標設定ができるためモチベーション維持にもつながります。
もし同じ志望校を目指す友達がいるのであれば年度ごとに分担して作って交換し合うのも良いかもしれませんね。友達に見てもらうことを考えると「間違ったことは書けない!」という気持ちが働いてより丁寧に調べることにつながり、結果として自身の学びにもつながります。

さて、アウトプットを意識した学習方法、いかがでしたでしょうか?
みなさんが志望校合格に少しでも近づけることを祈っております。