ブログ

第9回 面接対策 コロナ不安に関する口頭試問

チュートリアル通信
河合塾KALS 臨床心理士指定大学院講座 チュートリアル通信
チュートリアル通信では、大学院に合格したKALSのチューターが、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報や、心理士事情など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。
第9回 コロナ不安に関する口頭試問

新宿校チューター : 宮内 裕介 

皆さんこんにちは、チューターをしています宮内裕介です。

今回は2次面接でコロナに関する口頭試問を受けたときの対策を解説していきたいと思います。

これは私がチューター業務中に、受講生から2次面接でコロナの感染不安への質問にどう答えるかを訊かれて、考えたものです。
1次試験の事例問題などで出題される可能性は低いと思いますが、2次試験の口頭試問では訊かれる可能性はあると予想します。

この問題を予想できていなかったら、私が受験生であれば、間違った方向で返答してしまうかもしれません。
予想問題を設定して、3つの返答パターンを解説してみます。


面接対策 コロナ不安に関する口頭試問

予想問題 

「 クライエントが、新型コロナウィルスに感染するのが不安で外出できなくなったと訴えてきた。臨床心理士であるあなたはどのように対応するか? 」

(1) パターン① インテーク面接をキーワードとした返答例
(2) パターン② 生物心理社会モデルをキーワードとした返答例
(3) パターン③ リエゾン(連携)をキーワードとした返答例
(4) 面接官に評価されない返答例
(5) 自粛期間中の、自身の不安感を訊ねられたとき



(1) パターン① インテーク面接をキーワードとした返答例


「クライエントとは初対面であると仮定して、インテーク面接を行ないます。
その際注意するのはコロナウィルスの感染不安を聞く前に、治療同盟を築くことです。情報収集をする前に、クライエントを受容・共感し、ラポールを形成します。
その後、クライエントの主訴を丁寧に聞きながら、臨床心理査定を行ないます。
臨床心理査定は面接・観察・検査に分かれており、クライエントの状態に必要な手続きを進める流れになります。
最終的に治療目標を設定し、クライエントとの間にインフォームド・コンセントを結びます。
私は、クライエントの主訴がコロナウィルスの感染不安であっても、臨床心理士としての職務を基本通りに進めます。」

【解説①】 
上記の返答例は、面接官が臨床心理士の職務を聞いてきていると仮定した返答です。
問題の内容によっては、受験生側にとって様々な解釈が可能となるため、問題の意図が把握できないときは、返答する前に面接官に聞いてみましょう。
聞く内容は「クライエントとは    初対面でしょうか?」「臨床心理士の職務としての対応でよろしいでしょうか?」などです。
質問をしても減点になるわけではありません。面接官の返答が質問には答えられないという内容であれば、上記のようなインテーク面接の手順を説明します。コロナウィルスの感染不安であっても、臨床心理士の職務が変わるわけではありません。このような問題は、コロナウィルスへの対応に見せかけて、臨床心理士の基本的な職務を聞いていると理解しましょう。


(2) パターン② 生物心理社会モデルをキーワードとした返答例


「クライエントがコロナウィルスの感染不安で外出できないと訴えてきたときは、臨床心理面接の中で、主訴を聞いていきます。
そのときに注意するのは、前提としてコロナウィルスが原因であると決めつけないことです。
クライエントを多面的にアセスメントするために、生物心理社会モデルを用います。
生物学的要因として、感染不安につながるような疾病や障害、既往歴がないかを確認します。
心理学的要因としては、認知傾向やトラウマなどの影響がないかを調べます。
また必要であれば、検査の実施を検討します。
社会学的要因としては、クライエントが現在、仕事や家庭環境、人間関係に問題がないかを聞いていきます。
感染不安とは別に、外出できない事情を抱えていないかを確認します。
これら3つの要因を調べた上で、コロナウィルスの影響なのか、別の要因が考えられるのかを総合的に判断します。
その上で治療仮説を立てて、クライエントへ治療計画を提案します。」

【解説②】 
上記の返答例は、アセスメントベースでの回答を求められたときの返答例です。
注意するところは、クライエントの主訴をそのまま鵜呑みにせずに、多面的にアセスメントすることです。
臨床心理士として冷静な判断ができるかを試されています。


(3) パターン③ リエゾン(連携)をキーワードとした返答例

「アセスメントを通して、クライエントのコロナウィルスへの耐え難い感染不安が明らかになったときは、治療計画を立てて実行します。
クライエントを支援する上で必要なのは、他職種の専門家とのリエゾン(連携)です。
このときに、私は臨床心理士としてクライエントの心理的な支援を担当します。
疾病の治療が必要であれば医師が担当することになります。
また、感染予防策が必要であれば、公衆衛生学や感染症学の専門家の協力を得ることになります。
各々の専門家とコミュニケーションを取り、どの様に協働していくかを確認して、クライエント支援の目標に向かって連携します。
他職種の専門家が1つの目標に向かって連携・協働することで、クライエントの支援が可能になると考えます。」

【解説③】 
上記の返答例は、クライエントへの具体的な支援策を訊かれたときの返答例です。
ここで注意するところは、他職種の専門家各々が担当する範囲を明確にして、連携・協働することです。
他職種の専門家が1人のクライエントを支援するので、連携・協働になります。
3つの返答パターンを解説しましたが、最初から読んでもらえれば、支援の手続きとして①②③が繋がっているのが分かると思います。インテーク面接 → 生物心理社会モデルによるアセスメント → 他職種とのリエゾンによる支援、の順番です。

3つの返答パターンを1つの支援手続きにまとめて説明するのは、ボリュームが大き過ぎるので3分割にしています。
面接では、面接官がなにを訊いているのかを確認して、どこに重点を置いて説明するのかを判断しましょう。


(4) 面接官に評価されない返答例


「クライエントがコロナウィルスの感染不安で外出できないと訴えてきたときは、その主訴を聞いていきます。
その上で必要なアドバイスを行います。
クライエントの認知に何らかの歪みがないかを確認して、身体への影響、行動への影響、気分への影響を診断します。
身体への影響としては、慢性的な不眠状態などがあれば、心療内科の受診を勧めます。行動への影響としては、不安を解消するために、3密を避けるための行動リストの作成や、不必要な情報を遮断するために、テレビを消すことをアドバイスします。

【解説④】
アドバイス = アドバイスは、医師・精神保健福祉士が行なうものです。
臨床心理士が行なうのは支援です。
身体への影響、行動への影響、気分への影響 = これはCBTの認知療法のカスタマイズですが、特定の心理療法を用いて返答する必要はありません。
診断 = 診断は医師が行なうものです。
3密を避ける行動リストの作成や、不必要な情報を遮断 = このような具体的な行動レベルの予防策をアドバイスしてはいけません。
これは臨床心理士の仕事ではありません。予防策を考えるのは、公衆衛生学や感染症学の専門家です。


(5) 自粛期間中の、自身の不安感を訊ねられたとき

上記のような臨床心理士としての対応を訊かれる他に、受験生自身の自粛期間中の不安感を訊ねられる可能性もあります。
面接官から下記のような質問を受ける場合です。

「(コロナ感染予防のための) 自粛期間中は不安だったでしょう?」
「自粛期間中は、ストレスで勉強が進まなかったのではないですか?」

2次面接の面接官が、アイスブレイクのような意味のない質問をしてくる可能性は低いです。
上記のような質問がきたら、臨床心理士としてのストレス耐性を試されていると気づきましょう。

返答として「本当に不安でした」「ストレスで勉強に集中できませんでした」「大学も閉鎖中で、どうしていいのかわかりませんでした」「オンラインでカウンセリングを受けました」などの不安感の強さや、ストレス耐性の低さを表すエピソードは語らないようにします。

自身のポジティブな面に焦点を当てて、「家族や友達との会話を増やして、ストレスが溜まらないようにしていました」「ウィルス感染の不安を煽るようなテレビは見ないようにしていました」「休憩中は散歩をしたり、好きな音楽を聞いたり、リラックスを心掛けていました」などの、不安やストレスを溜めない様にしていたエピソードを話しましょう。

実際に今時点でストレス耐性の低さを自覚していても、大学院入学後に、トレーニングで強くすればいいのです。