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チュートリアル通信第16回 発達障害について知ろう①

チュートリアル通信
河合塾KALS 臨床心理士指定大学院講座 チュートリアル通信
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第16回 発達障害について知ろう①
河合塾KALS臨床心理士指定大学院講座

新宿校チューター : 今井美沙


今回のチュートリアル通信では、“発達障害”について取り上げたいと思います。発達障害は、KALS受講生の中でも関心が高く研究計画書のテーマです。実は、現在の臨床心理学の分野でも発達障害は大きなブームとなっており、研究や研修会などが全国各地で開かれています。私もまだまだこの分野に関しては勉強中の身ですが…、今回は、発達障害とはどういったものなのかということ、次回は発達障害に関する社会の動き、援助法などを紹介したいと思います。

発達障害とは?

発達障害という言葉は皆さんよく聞くかと思いますが、そもそも発達障害って何なのでしょうか?WHOが作成している基準(ICD-10)では、発達障害は以下の3つの定義があるとされています。
①発症は常に乳幼児期あるいは小児期であること
②中枢神経系の生物学的成熟に深く関係した機能発達の障害あるいは遅滞であること
③精神障害の多くを特徴づけている、寛解や再発の見られない固定した経過であること
 これを見てみるとわかる通り、発達障害はまだ原因ははっきりと特定されていないものの、器質的な原因があるとされています。以前は、親のしつけや養育環境が原因と考えられていた時期もあったのですが、現在ではそれは否定されています。また、①に書かれていることを見ると、「じゃあ、今よく聞く“大人の発達障害”って何なのだ?」と思う人もいるかもしれませんね。大人の発達障害は、発達障害の傾向が元々あったものの子どもの頃は様々な理由で診断までは至らなかった方が、大学生や社会人など新たな環境におかれて困難なことが増え、それに伴って背景にあった発達障害の存在も明らかになったという例のことを指します。そのため、大人の発達障害=大人になって発達障害を発症した方ではありません。

発達障害の種類

そんな発達障害ですが、この障害群に含まれる障害にはどんなものがあるのでしょうか?DSM-5の中には、発達障害に該当する“神経発達症群/神経発達障害群”という分類の中に

①知的能力障害群
②自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
③注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
④限局性学習症/限局性学習障害

が含まれています。一方、ICD-10の診断分類では、知的障害は別の診断基準とされています。今回は、比較的試験にも出てきやすいDSM-5に準じて説明していきたいと思います。

知的能力障害群

知的能力障害群とは、「知的機能の水準の遅れ、そしてそのための通常の社会環境での日常的な要求に適応する能力が乏しい」(ICD-10)と定義されています。以前は知的障害の程度は、主に知能指数で測られていました。しかし現在では、概念的・社会的・実用的という3領域においてどの程度なのかというもので、軽度・中等度・重度・最重度に分けるようになりました。日本においては、“軽度”の知的能力障害群の方が最も多いとされています。しかし、軽度とはいえ、生きにくさ・困難などを抱えている方も多いため、そういった人にはその人に合った援助が必要です!

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害

「発達障害に関心があります!」という人が関心を持つ障害としては、多くがこの障害かもしれません。それくらいこの障害名は、社会的にもかなり浸透してきています。
この障害を持つ人の特徴を非常にわかりやすく説明しているものとして、ウィングの3つ組みが有名ですね。その3つとは…

①社会性
②コミュニケーション
③想像力と創造性

また、“自閉症スペクトラム”という概念を提唱したのも、ウィングです。スペクトラムとは、光の連続体という意味です。光が物に当たった際に虹色の光が出るのを見たことがありませんか?あれが、いわゆるスペクトラムというものです。自閉症スペクトラムという言葉もこの現象にならって、自閉症という状態の中にも実に多様な状態像があるのだということを示したのです。(ウィングは、ご自身のお子さんが自閉症だったようで、それゆえにこのような沢山の理論を打ち出されたようです。)また、この障害を持つ子ども達の中に多く見受けられるのが、“感覚過敏”です。自閉症スペクトラムの子どもは、特定の刺激に非常に敏感にキャッチしてしまうのです。例えば、特定の音、衣服の感触、気温などなど…。そのことで落ち着かなくなってしまい、パニックになってしまう子も多いです。一人一人にストレスとなる刺激は違ってくるので、日々の生活の中で何がストレス刺激となっているかを見極め、取り除いていく作業も大切となります。

③注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害

注意欠如・多動症/注意欠如多動性障害は、不注意・衝動性・多動性の3つを特徴とする障害群です。

①不注意…必要な注意を払うことや持続すること、不要な注意を止められないなど、注意力をコントロールすることが難しいこと
②衝動性…待つことができなかったり、刺激に対して反射的な反応を抑えられなかったりすること
③多動性…じっとしておられず、立ち歩き・身体の動きなどが見られること
(DSM-5では、②と③が一緒になり、不注意と多動性および衝動性という2つの軸で判断されます)

これらの特徴は、年齢を重ねるにつれて徐々に落ち着いてくることもあるのですが、そのまま放っておいてしまうと、特性だということが理解されず、「自分勝手な子」「わがままな子」と判断され、孤立してしまうという事態も起きかねません。(本人としてはそんなつもりはないので、そう判断されてしまうことはとても悲しいことです…)この障害群の場合もやはり、本人の特性だということを理解することがまず大切となるでしょう!

④限局性学習症/限局性学習障害

これは、知的な遅れはないにもかかわらず、ある特定の学習において著しく困難をきたす障害です。例えば、算数は全く問題なくできるのに、文字を読むことが難しいなどです。ハリウッド・スターのトム・クルーズも同じ症状を持っているというのはとても有名で、その他にも有名人のなかでこういった症状をお持ちの方はいます。この障害の種類としましては、以下のものがあります。

①読字障害…文字を読むことに困難を示す
②書字表出障害…文字や文章を書くことが困難となる
③算数障害…数の理解・計算などに困難をきたす

この障害は、一部の学習にのみ困難が出てくるため、本人のさぼりととらえられてしまうこともあることが大きな問題となっています。本人としては、非常に一生懸命取り組んでいるのに、なかなか習熟できないということ自体大変ストレスになるのですが、それに加えて回りからの厳しい叱責が入るとさらに辛い状況になることは皆さん想像できるでしょう。できないことに無理に取り組ませるのではなく、本人が無理のない形で取り組ませることが何よりも大切になります!

二次障害との関連性

発達障害との関連でよく語られるものに、“二次障害”というものがあります。発達障害の方達にはそれぞれ特性があるのですが、その特性に十分に理解が得られず、不適切な関わりがなされることがよくあります。厳しい叱責や否定的な言葉を向けられると、ご本人達は自分に自信を持てなくなったり、他人を信用できなくなってしまいます。そのようなことが、二次障害と言われています。これらの状態は、暴力・精神疾患・不登校や引きこもりなどの形で現れてくることもあります。このような事態を防ぐためには、何よりもご本人の特性を理解したうえで本人に寄り添った援助が何よりも大切になります!そのためにも、我々援助に関わる人間は、発達障害に関する知識の習熟・援助の経験などを積み重ねていくことが求められるのです。

大学院入試との関連性

これまで書いてきたことは少し実践的な部分もありましたが、では大学院入試とはどんな関係があるのでしょうか?実は、今年の大学院入試において発達障害が出てくる可能性が大いにあります!その理由は、①現在の社会の中で、発達障害の注目度が大いに高まってきていること、②DSM-5になって大きな変更があったこと(特に自閉スペクトラム症)があります。そのため、皆さんも発達障害の基本的な知識はある程度おさえたうえで試験に臨まれる方がいいかと思われます。

次回も発達障害について紹介いたします!

発達障害の知識は、大学院入試の時だけでなく、心理士になったうえでも必要となる知識です。皆さん、習熟を目指して頑張りましょう!
次回は、後半として、法律やどういった援助が行われているのかお伝えしていきます!

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