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チュートリアル通信第17回 発達障害について知ろう②

チュートリアル通信
河合塾KALS 臨床心理士指定大学院講座 チュートリアル通信
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第17回 発達障害について知ろう②
河合塾KALS臨床心理士指定大学院講座

新宿校チューター : 今井美沙


さて、今回は前回に引き続き発達障害について取り上げます。発達障害は現在大きなトピックとなっているため、社会的な援助の幅が広がってきています。また、援助方法なども少しずつではありますが、実施されてきています。今回は、その点を中心に取り上げていきます!良かったら、参考にしてみてくださいね(*^^*)

発達障害に関する法律・支援体制

まだ、発達障害の実態が明らかではなかった頃、発達障害の方達を取り巻く支援体制は決して十分とは言えない状況にありました。しかし、発達障害の存在が徐々に明らかになっていく中で、発達障害の方達への法整備も少しずつ進められていきました。今回は、その中でも教育の立場と行政の立場から1つずつ取り上げていきたいと思います!

教育の立場:特別支援教育

 “特別支援教育”という言葉を、聞いたことはありますか?これは、「一人一人のニーズに応じた適切な指導及び必要なニーズを行う」教育のことを指します。従来の日本では、“特殊教育”という名で呼ばれていて、対象も盲・聾・養護学校、特殊学級、通級指導の子ども達でした。しかし、文部科学省が平成14年(2002年)に行った全国調査では、通常学級に在籍する発達障害の可能性がある子ども達は、6.3%ということがわかりました。このパーセンテージは、人数に換算すると約69万人にあたるとされています!

このような実情から、平成15年(2003年)に「今後の特別支援教育の在り方について」という報告が発表されました。従来の特殊教育は、障害の種類や程度に応じて特別の場で行われていましたが、通常の学級に在籍する発達障害の子どもも含めた障害のある子ども達に対して、個々人のニーズに合わせた支援を行っていく“特別支援教育”という形に芳香転換がなされたのです。現在、学校現場ではこの考えに基づいて、先生方が様々な取り組みを行っています。スクール・カウンセラーになりたい!発達障害の子と関わりたい!という方は、このことも覚えておくといいでしょう!

行政の立場:発達障害者支援法

この法律は、2005年(平成17年)に施行されました。この法律の目的は、以下のように定められています。

この法律は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることをかんがみ、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的とする。(第一条)

この法律が制定される前は、発達障害に対する理解が十分とは言えず、本人や家族の方には偏見や批判などが向いてしまっていました。また、当時の社会的制度の狭間にあったために、必要なサービスが受けにくいという状況もありました。この法律が制定されてからは、支援の網目からすり抜けてしまっていた発達障害(特に知的障害を伴わない発達障害)も支援の対象として明確に位置づけられるようになりました。

また、この法律の中で“発達障害者支援センター”というのも出てきますが、これはどういったものなのでしょうか?発達障害者支援センターは、発達障害者やご家族の総合的な支援を行うことを目的としている専門機関になります。そのために、ご本人やご家族に専門的な相談・助言、医療・教育・就労・福祉などの関係機関との連携などを行っています。ここでは、臨床心理士の方も活動されているので、もしかしたら将来皆さんの勤務先になっているかもしれません!全文:発達障害者支援法 

発達障害の援助方法

さて、ここまで発達障害について取り上げてきましたが、発達障害の方達にはどういった援助が行われているのでしょうか?今回は一部になりますが、行われている機会が多い2つの方法をお伝えします!

・環境の“構造化”

“構造化”とは、情報を整理して、その子に合わせた枠組みを作ってあげることです。発達障害を持つ子は刺激に敏感な子もいて、多くの刺激にさらされると混乱して落ち着かなくなってしまいます。そのため、その子に合わせた枠組みを作ってあげる必要があります。構造化の方法としては、①生活の構造化、②空間の構造化があります。①生活の構造化は1日のスケジュールを決めて、日々に生活の順番に沿って送ります。

例えば…、
・朝起きる→朝ごはんを食べる→歯磨きをする→着替えをする
・学校から帰ってくる→宿題をする→ゲーム(1時間)→お風呂
※一日の流れを紙に書いたものを貼っておくなど、目で見える形で示すと尚グッド!視覚的に示すことを“視覚化”と呼びます!発達障害の方達は視覚情報を処理することが得意なので、こういった形で示す方が理解しやすいのです。

②空間の構造化とは、生活空間を用途ごとにわかりやすく整理していくことです。これは、家の中だけでなく、教室などでも実践されています。今回は、教室で良く見られる実践例を紹介します!

<教室の中での実践例>
・遊ぶ場所・勉強する場所を大きく分ける。
・教室の掲示物・用具など不必要な物はなくしたり、カーテンなどで見えなくしたりする。
・宿題の提出場所/ロッカー/靴箱などを明確に示し、どこを使えばいいかを明確にする(名前を付ける/課題ごとに入れるボックスを分けるなどなど…)。

この方法は、発達障害を持つ子だけでなく、発達障害を持たない子ども達にも有効です!発達障害の子達にわかりやすい環境を整えるということは、その他の子にも良い影響を及ぼします。

・ソーシャルスキル・トレーニング(SST)

発達障害を持つ方達は、認知的特性によって社会性の問題が伴いやすいです。そのため、社会的スキルの習熟のためにソーシャルスキル・トレーニング(SST)が実施されることがよくあります。実際は、数人のグループで行います。そして、あらゆる社会的場面(友達に嫌なことを言われた場面/友達が持っているおもちゃを貸してほしい場面など…)を想定して、その時どのようにふるまえばいいのかを訓練していきます。多くの場合、場面が描かれたカードなどを使って行われます。そして、訓練が終わったら、日常生活でも行えるように練習していきます。こうすることで、生活するうえで必要な社会的スキルを身につけていきます!

終わりに…

いかがでしたか?発達障害のお子さんは皆さんが臨床現場に出た時、必ず会うことになります。また、最近では大人の発達障害というものも、取り上げられるようになってきており、そういった方と関わる機会も増えていくと思われます。以前、私が読んだ本の中で、「発達障害であること自体が問題なのではなく、その障害ゆえに不適応となってしまうことが問題なのだ」という文を目にしたことがあります。これは本当にそうだと思います。発達障害を持つ子ども達は好きでそのようなことになったわけではないのに、苦しい思いをしています。そういった視点がないと、ご本人の目線に立った支援というのもできなくなっていきます。障害を持つ本人が、障害を持つ自分を受け入れながらその後の人生を送る手助けをする、そういった援助を今後も実現できるように日々頑張っていきたいものですね。


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