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心理・チュートリアル通信「研究計画書作成について」(1)

2022年度
河合塾KALS 臨床心理士指定大学院講座 チュートリアル通信
チュートリアル通信では、大学院に合格したKALSのチューターが、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報や、心理士事情など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。
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研究計画書作成について(1)

名駅校チューター:落合 

こんにちは!名駅校チューターの落合です。今回は「研究計画書作成」についてです。
「心理学の勉強をして、英語の勉強もして、研究計画書に取り組んでいる場合じゃない…」「興味のあるテーマはあるけど、どうやって研究にしていったらいいのか…」「そもそも、研究者になりたい訳じゃないのに、なぜ研究しないといけないのか…」などなど、嘆きの声を上げている方も多いのではないでしょうか。
そこまで言ってないですか?失礼いたしました…。私が元々文句の多い受験生だったようです。文句ばかり言っていた私もなんとか大学院に入学して、修了し、臨床心理士として働くことができるようになりました。今回は、そんな私の経験も踏まえて、研究計画書を書くことについて考えてみたいと思います。

① 大学院ではなぜ研究をするのか?

「大学院とは研究機関だからです」ということが言いたいわけではありません。「公認心理師・臨床心理士として心理的な支援をしていきたいのであって、研究者になりたいわけじゃないのにな…」と考えることもあると思います。確かに、資格をとって仕事を始めてからは、カウンセリングや心理検査をすることが中心になり、研究に取り組むことはない、という心理師・士の方も多いと思います。
しかし、研究と縁がなくなるということはないです。多くの心理職の方は、なんらかの学会に所属したり、研究会に入ることで、常に学び続けることをされています。ここで、最新の論文を読んだり、研究発表を聴いたりすることで、新しい知識を取り入れていくことが求められます。この時に、大学院の中で論文を読み漁ったり、自分も苦労して研究した経験や、他の人の研究発表を聴いた経験が活きてくるわけです。
このような場では、専門家向けに発表されているため、ある程度研究の「型」のようなものを知っておくことで、きちんと理解できるようになります。
度々話題に上がることですが、「カウンセラー」の資格というのは、この世にたくさんあります。公認心理師・臨床心理士として信頼を得ていくためには、少なくとも心理学研究の新たな知見を常に取り入れていく姿勢を一生続けていくことが必要だと思います。
みなさん「英語」の勉強が大切なのは理解しやすいと思います。暫定「世界の共通言語」なので、これを学ぶことで国の垣根を超えたコミュニケーションが可能になるわけですよね。それと同じで、心理学的研究について学ぶことは、「専門家同士の共通言語」を学ぶことだと思います。
本格的に英語を使いこなせるようになるためには、例えば海外留学をしたり、または仕事で使うことが求めらたりすることで身についていきますよね。それと同じで、自身で苦労して研究をしてみるという経験を通して、心理学的なものの見方、考え方を身につけていくことができるようになるのです。
「研究計画書」作成は、「専門家」になるための第一歩なようです。苦労して書き上げた経験は絶対無駄にはならないので、がんばっていきましょう!

② 研究計画書の組み立て方

9月入試の人の、ざっくりとしたスケジュールについては、次のようになると思います。①関心領域を決定する(4月ごろ)、②書籍・論文を読み込む(5月ごろ)、③研究テーマと仮説を決める(6月ごろ)、④文章に起こしてみる(7月ごろ)、⑤修正を繰り返して、完成!(8月ごろ)。
特に、②→③の流れが、大切で、難しいところかと思います。よく聞こえてくる声として、「AとBの関連について研究したいと思ってるんですけど、先行研究がないんですよね」というものがあります。
こうなった時には、「収束させるの早すぎたのでは」という視点を持ってほしいと思います。つまり、②の過程で「拡散的思考」を十分にした後に、③で「収束的思考」で研究として形にしていくことを考えるわけです。
先述のような場合、いきなり「AとBの関連についての研究」を探してしまっているのではないでしょうか。しかもAとBが関連があるというのは主観的な視点で考えたことではないですか?
このような場合は、まず、拡散的思考の段階ではAに関するものを読みこむ、Bに関するものを読み込む、という作業をしてほしいと思います。これをする中で、AやBといった概念を「構成する要素」についてや、「関連する概念」、または「類似する概念」について色々と知ることができると思います。そうしてみることで、例えば「AとBには、どちらもCという概念が関係しているので、それを通して関連を調べることができそうだ」ということに気がつくことができるかもしれません。または「Bは広い意味ではAに含まれる概念なので、関連を調べるまでもなかった…」とか「Bと類似した概念にB‘というものが存在していて、AとB’についての研究が既に多くなされているから、AとBの関連を調べた研究はなかったんだ」など、思い描いた通りでは研究として成り立ちにくいことに気がつくことができるかもしれません。
研究を考えるには「こだわりすぎず、こだわる」ということが大切なようです。「働く人の役に立つ研究がしたい」とか「ある心理療法の発展に貢献したい」などは個性にもなるのでこだわって良いでしょう。実は私も最初に研究しようとしていた概念を調べてるうちに、今はあまり臨床的意義が見出されてない概念だということを知り、他の概念の研究に変更しました。それも十分私のやりたいと思える研究になりました。

いかがでしたでしょうか。研究計画書について、「ある程度形にしてから人に相談しよう」と思っているうちにどんどん時間が経ってしまうという人もいらっしゃいますが、人に話してるうちに形が見えてくることもあります。遠慮なく、チューターを活用してみてくださいね!それでは今回はこれで終わりです。ありがとうございました!