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第5回 志望動機の書き方について

チュートリアル通信
河合塾KALS 臨床心理士指定大学院講座 チュートリアル通信
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第5回 志望動機の書き方について

新宿校チューター : 宮内裕介 



皆さんこんにちは、チューターをしています宮内裕介です。

今回は大学院に出願する際の志望動機の書き方を解説していきたいと思います。
志望動機は、臨床心理士(公認心理士)を目指す動機と受験大学院を目指す動機の2つに分類されます。

各々を端的に書きだすと下記の通りになります。


1. 臨床心理士(公認心理士)を目指す動機となるもの

(1) 臨床心理学を通して、社会の中でやりたいことがある
(2) 自分の過去の経験が、心理士を目指す理由となっている


2. 大学院を志望する動機となるもの

(1) 自分の研究と、指導を希望する大学院教授の研究分野がどう繋がっているかを説明 すること
(2) 自分の研究に、志望する大学院の教育システムがなぜ必要なのかを説明すること


簡単に書き出すと上記の様に各々2つの理由に分かれるだけです。
ただ、書かない方がよい内容もありますので解説します。


1. (1)臨床心理学を通して、社会の中でやりたいことがある

   これは臨床心理学を目指す王道といえる動機です。今の社会の中で足りないと考えている、もしくは変えたいと考えていることを、臨床心理学で解決するというものです。
教育領域において、こういう支援を考えている、医療領域において、このような活動をしていきたい等、なるべく領域を絞って、具体的なビジョンを書きましょう。

まだ、領域や働き方を絞っていない場合は、この領域とこの領域に関心があって、各々こういうことを考えていると表現しましょう。

   *書かない方が良いと思われる動機

①臨床心理学で経済的に豊かになるという動機。
職業として生計を立てることは必要ですが、お金が目的と勘違いされる表現は避けた方が良いです。

②具体性のない理想論。全世界の子ども達を笑顔にしたい等の、具体的な手段を検討できない、あるいは臨床心理学以外の方法を検討した方が良いと思われる動機。

③福祉(ケア)と臨床心理学(セラピー)が混同している動機。傷ついた人に寄り添うのはケアです。セラピーというのは、傷ついた人の辛さを科学的な手法で軽減させることです。
セラピーにも受容や共感の側面はありますが、それだけが目的であれば、福祉の仕事を目指した方が良いでしょう。

1. (2)自分の過去の経験が、心理士を目指す理由となっている

実際、臨床心理士を目指す人の多くの人が、この動機ではないかと思われます。
幼少期の家庭事情や学校でのトラウマ経験、自分の発達の問題、ボランティア体験などが動機となっているものです。

ただ、注意が必要なのは、自分の抱えているトラウマや発達上の問題を解決するために臨床心理士を目指していると捉えられない様にすることです。
自分の過去や抱えている思いを、全て正直に話す必要はありません。

あくまで、臨床心理学を目指すきっかけとして表現するに止めましょう。
臨床心理学は自分のためではなく、社会のためにあるというスタンスは崩さない様にして下さい。

自分の家族や友達の心理的不適応に対して、何もできなかったことが、目指すきっかけとなったという表現であれば問題ないです。

*書かない方が良いと思われる動機
①自分が乗り越えたいじめ体験を子ども達に伝えたい、あるいは、自分はうつを克服したので、うつ状態にある人の気持ちが分かる等の、経験則だけを書くのは止めましょう。
臨床心理学は経験も大切ですが、その本質は科学的なアプローチです。
トラウマタイズされていると判断されると、合格が遠のいてしまいます。


2. (1) 自分の研究と、指導を希望する大学院教授の研究分野がどう繋がっているかを説明すること
大学院の選択は、指導教授の選択です。指導教授の研究内容は事前に把握しておくことが必要です。
研究内容は、教授が発表した論文と著書で把握します。
数年前に書かれたものではなく、なるべく直近に書かれているものを読みます。全文が数百ページに及ぶ大作の時は、論文であれば論旨を、著書であれば前書きと後書きから読みましょう。
教授の最も訴えたいことは、最初か最後に必ず書かれています。それを把握してから読む方が効率が良いです。
読み終わった後にその一部を引用し、教授が著書の中で説明されていたこの理屈は、私が研究テーマを完成するのに、こういう理由で必要だと考えますと繋げるのです。

*書かない方が良いと思われる動機
①教授は認知行動療法の専門家ですので、学びたいと思いました等の、大雑把な理由。
大学院教授は先生であり、研究者です。過去の心理学大家の研究を単になぞっているだけではありません。
専門家として授業を担当しながら、独自の研究も進めています。
指導希望の教授の研究が、他の教授の研究と比べて何が違うのか、その違いを理解しましょう。
理解できれば、動機の表現として、教授の認知行動療法(あるいは他の心理療法)の中のこの研究は~、といった様な、具体的で焦点化されたものになっていくはずです。

②教授の著書を読んでから憧れていたなどの、1人のファンのような理由。大学院の教授には著書を何冊も出版している有名な先生がいます。
憧れはあるかもしれませんが、有名人という見方ではなく、指導を受けたい臨床心理学の先達という見方をしましょう。


2. (2) 自分の研究に、志望する大学院の教育システムがなぜ必要なのかを説明すること
大学院の選択は指導教授の選択ですが、大学院によっては指導教授を選択できないところもあります。
ですので、大学院の志望動機は、指導教授と大学院の教育システムの両方を準備しましょう。
教育システムというのは、通常授業以外の、ケースカンファレンスやカウンセリング、SVのシステム、外部実習先、OBネットワークなどです。

これは指導希望の教授の説明と同じ理屈で、志望大学院と他の大学院の違いを探すことになります。
志望大学院にあって、他の大学院には無いものを探すのです。
正直なところ、どの大学院も良いシステムは取り入れているので、違いを見つけるのは難しいです。
そんな中でも、修士1年次からカウンセリングを担当できるであるとか、SVのシステムが充実していて自分を鑑みえる、この外部実習先に行くことによって理論と実践が両立できる等の理由を、わずかな違いでも探してみましょう。

*書かない方が良いと思われる動機
①大学院の立地条件・校風・大学のブランド等、心理学とは関係のない条件。
自宅から近くて通いやすいというのは魅力的な理由ですが、志望動機としては評価されません。
社会人として働きながら通うことができるという理由であれば、立地条件や夜間開講を加えても問題ないです。

②ビジネスが目的と勘違いされる理由。産業領域の外部実習先で、メンタルヘルスの推進やリワークシステムを学びたいという理由は全く問題ありません。
ただ、メンタルヘルス用のスマホアプリを開発する、リワーク施設の運営で起業したいなどの理由は、ビジネスが目的と捉えられるでしょう。大学院側の誤解であったとしても、疑われた時点で不合格になります。


志望動機を願書に記入させない大学院もありますが、2次面接では必ず訊かれます。

受験生の考えていることが反映されていますので、大学院側は注目します。時間のあるときに、一旦文章にして準備しておきましょう。