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第12回 2020年度心理系大学院秋期試験レビュー

チュートリアル通信
河合塾KALS 臨床心理士指定大学院講座 チュートリアル通信
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第12回 2020年度心理系大学院秋期試験レビュー

新宿校チューター : 宮内 裕介  



皆さんこんにちは、チューターをしています宮内裕介です。
今回は、秋試験のレビューをお伝えしたいと思います。コロナ禍における試験の実施でしたが、試験内容に関しては例年と比べて大きな変化はなかったと感じます。試験方式と面接での質問には、いくつか異なる点がありましたので、解説したいと思います。また、合格者へのヒアリングと合格レポートから、合格者に共通していた行動も説明します。
このレビューの内容は、この通り実行すれば合格するという絶対的なものではありませんが、内容を読んで頂いて、効果がありそうだというものがあれば試験対策に取り入れてみて下さい。

1.一次試験 合格が難しかった試験方式
(1) 同日内に、一次試験と一次合格発表、二次試験を行なう方式
2.二次試験 例年とは異なっていた点
(1) グループワークでの出題「新型コロナウイルスの流行で、臨床心理士の業務にどのような影響が出るか?」
(2) 面接での質問「アルバイトやボランティアを通して、臨床的な経験
をしたことがあるか?」
(3) 面接の最後に訊かれた質問「この質問は合否判断とは関係ないので、リラックスして答えて下さい」
(4) オンラインでの面接試験
3.合格者に共通していた行動
(1) KALSの学習フォローシステムの利用
(2) 過去問に集中した反復学習
(3) 自分なりのストレスコーピングを持つ


1.(1) 同日内で、一次試験と一次合格発表、二次試験を行なう方式

これは一次試験を午前中に実施し、昼頃に合格発表をして、午後に二次試験を行なう試験方式のことです。以前からある試験方式ですが、今回は一次合格が難しかったように感じます。難しかった理由は1つではないと思いますが、私は大学院側の時間と空間の問題があったのではないかと考えます。
一次と二次の試験を別日で実施する場合、大学院には、一次合格のボーダーラインに近い得点をした受験生は合格として二次へ進ませて、面接で合否を決定する傾向があります。この場合、二次試験は後日なので、一次合格者が想定より増えても、面接時間と場所を調整することができます。一次と二次が同日実施の場合は、面接時間と空間が感染対策もあって制限されています。この場合には、制限人数以上の一次合格者を出すわけにはいけません。従って、最上位得点者から制限人数までを一次合格させることになります。
上記は私の仮説ですが、当たっているとしたら、この試験方式では1点の差で一次の合否が決まる可能性があります。この試験方式を採用している大学院を受験する場合は、より高得点を狙っていくことが必要です。


2.(1) グループワーク(GW)の課題 「新型コロナウイルスの流行で、臨床心理士の業務にどのような影響が出るか?」

上記は、ある大学院で出されたGWの課題です。このような問いは、1つの正解を言い当てるのではなく、臨床心理士としての冷静な思考力が試されていると言っていいでしょう。回答範囲の広い問いなので、様々な影響を挙げることができそうです。
GWの議論で注意すべきところは2つあります。1つ目は今起こっている具体的な現象・対策から、思考をスタートしないことです。例えば、対面カウンセリングでの感染可能性はすぐに思いつきます。感染予防が必要となるので、予防マスクと換気が必要ではないかといった議論が予想されます。課題から逸れていないので、良い展開に思えますが、この展開になってしまうと、次々に出てくる意見は感染予防と対策です。課題は、予防と対策を訊いているのではありません。訊いているのは、臨床心理士の業務への影響です。ですので、思考のスタートは、具体的な対策ではなく、臨床心理士の4業務となります。「臨床心理査定、面接、地域援助、調査・研究において、どの様な影響が出るか考えてみましょう」が出発点になります。
2つ目の注意点は、議論の方向づけです。GWは1人の意見が他のメンバーに影響を与えるので、1つの方向性が出ると、皆がその方向に焦点化する傾向があります。前述した様な予防と対策に限った議論が走り出したときは、「感染予防は、査定と面接に影響しますね、それでは、地域援助と調査・研究にも何らかの影響が出そうですね」と、方向性を修正する意見を出すことが必要になります。
この課題の模範回答をつくるのは難しいですが、参考として、私が考えた影響と対策をまとめて表にしておきます。皆さんであれば、どう答えるかは考えてみてください。


考えられる影響その対策
臨床心理査定・従来の精神疾患と、感染への過度な不安感が併存し、査定が難しくなる・正しく査定ができるように、医師と感染予防の専門家の意見を取り入れる
臨床心理面接・感染予防の観点から、対面でのカウンセリングが難しくなる
・感染不安で外出できず、面接できないクライエントが増える
・感染予防対策の徹底及び、オンライン面接へ移行するための環境整備を進める
臨床心理的地域援助・社会全体でストレスと不安感が膨張し、うつ病患者が増加する
・高齢者が行動制限を受けることで、認知症の症状が悪化する
・子どもへの接触が制限され、プレイセラピー等ができなくなる
・非接触型のセラピーや検査、心のケアができるように、他職種と連携して新たな方法を考える
調査・研究・感染不安を低減させるのに有効な心理的要因の調査が必要となる・大学などの研究機関と連携する

2.(2) 面接での質問「アルバイトやボランティアを通して、臨床的な経験をしたことがあるか?」

この質問は例年よく訊かれる質問で、内容的には今年も同じです。例年と違っていたのは、この質問をした大学院が多かったことです。主に現役生と初学者が訊かれているので、「就職難を避けるために大学院に進学しようとしているのではないか?」と、大学院側が疑問を持っていた可能性があります。
臨床心理士を目指すきっかけやモチベーションとなる経験は、面接で話す必要があります。今までに経験が無いようであれば、受験までに自身の研究テーマに合った領域のボランティアを体験しておきましょう。臨床経験は年単位を指しますが、臨床的な経験という表現であれば、数日間のボランティアでも実績となります。募集している機関によりますが、実働1日間からでもボランティア募集は出ています。


2.(3) 面接の最後に訊かれた質問「この質問は合否判断とは関係ないので、リラックスして答えて下さい」

異なる大学院を受験した2人の受講生から、上記のような質問をされたと聞いて、私は違和感を持ちました。その理由として、面接時間内でのやり取りであるのに、なぜ合否に関係ないと面接者が宣言する必要があったのかと考えたからです。私の推測としては、この質問の意図は2つに分かれます。
1人目の受験生が上記の質問の後に訊かれたのは、研究計画の方法に関しての追加の質問でした。この場合は、緊張している受験生に対して、面接の終了宣言を出すことでリラックスして答えて貰いたいという面接者の言葉通りの意図だったと思います。
2人目の受験生が上記の質問の後に訊かれたのは、「コロナ禍での受験勉強にはストレスや不安があったのではないですか?」という内容でした。この質問には注意が必要です。訊かれている対象が、ストレス耐性や不安の強さだからです。面接者が受験生の面接態度を観察して何かを感じたが、確信が持てないので、本音が出やすい質問をすることで確認したかったという意図に思えます。
面接では、面接者の優しい口調に釣られて自身のストレスや不安の強さを表すエピソードは話してはいけません。そのような質問を受けたら、明るく「大変でしたけど、〇〇○○(ストレスコーピング)をしていたので、勉強に集中できました。」と答えましょう。


2.(4) オンラインでの面接試験

数校の大学院で2次面接がオンラインに変更になりました。受験生から話を聞くと、質問内容は対面での面接と変わりませんでしたが、それ以外の点で違いはあったようです。内容を書いておきます。
*過去の面接傾向は圧迫だったが、オンラインでは圧迫なしの面接だった。
*普通のスピードで話していたが、ゆっくり大きな声で話して欲しいと言われた。
*オンライン面接は自宅で受けたので、さほど緊張しなかった。
*パソコン上部のカメラの上に、カンニングペーパーを貼り付けた。志望動機や研究計画、将来のビジョン等、緊張して忘れてしまいそうなことはキーワードにして おいた。ペーパーを手元に置くと、真下を見ることになるので、読んでいることがバレてしまう。カメラを見ている視線と、全く同じ視線でキーワードを確認できるようにペーパーの位置を調整しておいた。


3.(1) KALSの学習フォローシステムの利用

合格者は全員、KALSの学習フォローを利用していました。先生への質問書の利用、オフィスアワ-での質問、チューターカウンセリングの利用、過去の合格者アンケートの確認等、合格の確率を上げる行動を繰り返し取っていました。私には、受講生が自らをアセスメントして、合格するのに足りない部分は何かを考えていたように感じます。また、合格者には自習室を利用していた人も多かったです。自習室の環境は、同じ目的を持った仲間がいるだけではなく、一次試験の会場の雰囲気がほぼ再現されています。慣れておくに超したことはありません。


3.(2) 過去問に集中した反復学習

合格者は試験の2ヶ月前には出題が予想される領域の語句説明を反復して学習していました。特徴としては、語句説明の回答完成度を100%に近づける努力をするよりも、完成度は80%~90%だが、より多くの出題パターンに対応できるようにしていたことです。


3.(3) 自分なりのストレスコーピングを持つ

自粛生活の中で合格者が勉強に集中できた理由の1つは、ストレスコーピングを持っていたことでした。合格者からヒアリングした内容が下記の通りです。
*友人と定期的にオンラインで会話や飲み会をしていた。
*感染不安を煽るニュース番組等は観ないようにして、好きな音楽番組やお笑い番組を観ていた。
*自宅で1人勉強するのではなく、KALSの自習室に来て勉強していた。外に出ること自体がストレス解消になっていた。
*KALSで友達ができて、受験の情報交換やコミュニケーションをとっていた。孤独では 無いことが確認できた。
*安定した睡眠が取れるように、お風呂の湯船に浸かったり、就寝前にスマホを見ないようにしたりしていた。



以上が秋期試験のレビューです。効果がありそうだと思えることは、ご自身の学習プランに取り入れてみてください。