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【特別号】心理・チュートリアル通信「心理学論述問題のパターン解答法」(1)

2021年度
河合塾KALS 臨床心理士指定大学院講座 チュートリアル通信
チュートリアル通信では、大学院に合格したKALSのチューターが、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報や、心理士事情など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。
【特別号】心理・チュートリアル通信「心理学論述問題のパターン解答法」(1)

新宿校チューター : 宮内 裕介  



皆さんこんにちは、KALS新宿本校にてチューターをしています宮内裕介です。
今回は、論述問題を1つのパターンで解答していく手法を説明します。心理療法や心理検査の比較、テストバッテリ-等のテーマが指定されている問題は、皆さん、解答練習を重ねていると思います。それ以外の、社会問題からテーマを見抜いて解答する論述を取り扱っていきます。
下記の6問は受講生から解答の方向性を訊かれた、ある大学院の過去問です。KALSの授業で勉強していれば十分に対応できる問題ではありますが、問題のテーマを読み違えて解答してしまうと減点される可能性があります。テーマを見抜いて、序論・本論・結論に展開アプローチを組み合わせた1つのパターンで全ての問題に解答していきます。解答のクオリティを100%に近づけるよりも、70~80%のクオリティながら機械的に書き進めて試験時間内に全て解答できることを目的とした解答法です。

論述問題のパターン解答法
序論 : 論を展開するアプローチを説明する
本論 : アプローチを具体的に説明して、そこにキーワードを盛り込んでいく
論述の軸は心理士としての役割 (社会問題への論述に疾病の原因と症状だけ書い
ても、得点は伸びないです)
結論 : 本論のまとめと追加説明

1.問題① 「学校における特別支援教育に関して、スクールカウンセラー(臨床心理士)はどのような関わりが求められているかを述べなさい」 600字設定

①解答例
特別支援教育に関して、スクールカウンセラー(臨床心理士)として求められる関わりを臨床心理士の4業務で論じたい。
臨床心理面接(カウンセリング)においては児童各々のニーズを傾聴し、何でも話してもらえる信頼関係を築くことが必要である。その際は障害特性を理解するともに、児童が持つストレングスも理解し、その強みを活かして児童が成長していけるイメージを持っておくことも重要である。臨床心理査定においては、学校での児童の様子を観察し、どんなことが生活や学習上の困難となっているかを掴む。そして、児童にとってどのような環境調整が必要なのかを理解することが求められる。臨床心理地域援助は、教員へのコンサルテーション、保護者への必要な支援、関係者が連携しての協働が、これに当たる。教員へのコンサルテーションは対等な専門家同士として情報共有し、支援方針を確認し、各々の役割を明確にする機会でもある。保護者への支援は信頼関係のもと、お子さんとのコミュニケーションにおいて注意すべきことを伝える。スクールカウンセラーと先生、保護者が連携することで、児童に対する支援策がより有効なものとなると考える。調査・研究においては、教育現場における支援策を研究者での立場でも捉え、児童にとっての生活のしやすさや学習のしやすさを調査する。
上記4業務が求められる関わりであり、それにより児童1人1人のニーズに応えることと、ソーシャルインクルージョンの実現に寄与できると考える。 (618文字)

①解説
展開アプローチは臨床心理士4業務を使い、4業務の中で最も重要な地域援助の多職種連携に焦点を合わせて論述しています。また、特別支援教育は障害を持つ児童のための教育ですが、そのキーワードは「ノーマライゼーション」と「ソーシャルインクルージョン」です。療育に関わる問題には、このキーワードのどちらかを盛り込むようにしてください。

2.問題② 「面接でのカウンセリング業務以外に、これからの臨床心理士に求められる仕事をいくつか具体的にあげて説明しなさい」 600字設定

②解答例
臨床心理士がこれから求められる仕事は、臨床心理査定と臨床心理的地域援助、調査・研究の3業務において考えられる。
臨床心理査定においては、従来のクライエント(以下 CLと略す)に対する面接と観察、検査に加えて、環境からの影響をアセスメントすることが課題となる。今回の新型コロナウィルスの感染不安は、CLの既存の疾病に何らかの影響を与えていると考えられる。新たな環境要因がどのような影響を及ぼしているかを査定できる能力がこれからは必要とされる。臨床心理的地域援助においては、多職種連携によるコミュニティアプローチの必要性である。カウンセリングを受けられない状況にあるCLには、アウトリーチが有効となる。CL訪問時には、医療の専門家である看護師、社会面の専門家である精神保健福祉士等と連携し、各領域の専門家としてコンサルテーションし合い、CL支援の共通目標に向かって協働する。調査・研究においては、フィールド調査から仮説を生成し、法則を導き出す必要性である。社会環境が変化したときには、CLに対する従来の支援策の効果が低減していくことが考えられる。そのようなときは、心理学の先達が確立した理論を単になぞるだけではなく、研究者として調査し、新たな法則を導き出す必要がある。臨床心理士は実践家としての業務と科学者としての研究の両方で、社会に貢献する専門家である。
変化する社会環境に合わせたアセスメントと支援活動、調査・研究が、これからの臨床心理士に求められる仕事と考える。 (623字)

②解説
“面接でのカウンセリング業務以外”という条件で、面接室の外で行われる地域援助、コミュニティアプローチがテ-マだなと分かります。“いくつか具体的に”という指示であるので、多職種連携による支援例を複数挙げて論を展開することを考えました。しかし“いくつか具体的に”が、地域援助のみを指しているとは限らないのと、“これからの”という指示には調査・研究のニュアンスを感じました。論の展開は、一番大きなアプローチである臨床心理士4業務を選択しました。4業務から、臨床心理面接を除いた3業務で論展開し、臨床心理査定にはコロナ感染予防の影響、臨床心理的地域援助にはコミュニティアプローチ、調査・研究には科学者実践家モデルを組み入れて完成です。