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VOL.2 研究計画書 基礎編

2023年度
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チュートリアル通信では、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください


研究計画書 基礎編

新大阪校チューター:二木 

◆ご挨拶

6月に入り、いよいよ研究計画書の作成に取り掛かっている方も多いのではないでしょうか。今回は研究計画書(基礎編)として、研究計画書の構成、論点整理表がテーマです。研究計画書は受講生の皆さんにとっては1つの大きなハードルになります。私は河合塾KALSの卒業生ですが、研究計画書の作成でつまずいて思うように勉強が進まなくなったことを思い出しました。そんな時、頼らせてもらったのがチューター相談です。チューター相談は個別相談なので、その時のあなたに合ったアドバイスを受けられるのも魅力です。私は当時色々な悩みを聞いてもらっていました。手が止まった時はぜひチューター相談をご活用ください。


◆研究計画書の構成

文献収集が完了し、文献をある程度読み進めていくと、研究計画書執筆のステップに入ります。いざ研究計画書を書くぞ!と意気込んで取り掛かった時、「何から書いたらいいの?」と手が止まってしまうことがよくあります。
こんな時、まずは研究計画書の【構成】を意識することが大切です。【構成】とは、何をどの順番で書いていくのか、です。研究計画書の構成については一般的な構成が決まっています。これは論文を書く際のお作法であり、暗黙のルールのようなものです。
研究計画書の一般的な構成は次のようになります。

【研究計画書の構成】
(1)はじめに(問題提起)
① 研究動機
冒頭でなぜこのテーマを選んだのか、ご自身の問題意識を説明します。あなたがこのテーマに興味を持ったきっかけを書いてみてください。
実務経験のある方は実務上の問題点や課題点などを絡めてできるだけ具体的に書くと良いでしょう。
② 研究の目的・成果(研究のゴールは何か)
このテーマについて研究を行うことで、自分にとってどのような意義があるのか、また、社会に対してどのような貢献ができるのかを考えて書いてみてください。研究することで何が解決されて、どのような良い効果があるのか想像を膨らませましょう。ただ、研究計画書の段階で目的・成果まで達成する必要はありませんので、研究の方向性を示すことができれば十分です。

(2)先行研究(判決文、判例評釈などを使ってまとめる)
① 判決(事件)について
事案の概要(認定事実)、論点(争点)、当事者(納税者と国)の主張、判決(地裁、高裁、最高裁)を簡潔にまとめるパートです。
裁判所の判決原文をそのまま書き写すと膨大な文字数になりますので、完成する研究計画書の文字数に合わせて割愛しながらまとめましょう。

② 検討
①で示した論点ごとに文献で書かれている学説を整理するパートです。文献を読み進めると、各論点に賛成・反対・中立それぞれの意見とその根拠が書かれています。こちらのパートでは、先行研究として学者の中でどのような意見が出ていて、その根拠は何かをまとめていくようにしましょう。コツはご自身の意見は後回しにすることです。こちらのパートでは後述する【論点整理表】を活用すると学説の整理がしやすいでしょう。

(3)まとめ
(2)の先行研究を踏まえて、自分の考え、疑問点、現時点での結論を述べるパートです。(2)②で議論した内容に基づいて、ご自身がどの考え方がよいと考えるのか、その根拠と共に下記進めていきます。結論はあくまでも現時点のものでOKです。先行研究では幅広い視点から議論が繰り広げられていることが分かります。ご自身の結論としては、まずどの先生の考え方に一番賛同できるかという視点で書いていくと良いでしょう。

(4)今後の研究計画
大学院入学後はこのテーマについてどのような視点でさらに深く研究をしていくのかを書いていきます。例えば、類似する判例や海外の事件を取上げて複合的な観点から判決の論拠を分析するのも良いですし、民法の知識を学んだうえで改めて研究したい等、現時点での方向性を書きます。また、大学院によっては入学後のスケジュールを学期(または年次)ごとに分けて書いていくことも必要になります。

こちらの構成は大学院に入学されて本格的に論文執筆される際にも参考になる形式です。また、文献を読んでいく際にも構成を知っていると内容が掴みやすくなりますので、構成も意識しながら文献を読み進めていきましょう。ただ、受験される大学院の出願書類の形式に合わせてアレンジしていく必要がありますのでご注意ください。
研究計画書の他に志望理由書を提出する大学院の場合は、志望理由書でこの大学院を志望するのか、なぜ大学院に行きたいのか、なぜ税理士になりたいのか、どんな人物になっていきたいのか、などご自身の熱い想いを語りましょう。志望理由書の提出がない大学院の場合は、研究計画書の(1)①研究動機のところにご自身の想いを盛り込んでも良いでしょう。

◆ 論点整理表

テーマとして取り上げた事件では、いくつかの論点(争点)について議論がされています。判例評釈では学者や税理士の実務家の先生たちが、各論点について判決文の中で各裁判所はどのように判示しているのか、また、先行して研究している学者たちはどのように主張しているか(学説)などを整理(先行研究)したのちに自説を紹介しています。初めて判例評釈を読まれた方からよくのご相談で、「文献を読んでいるのですが、研究計画書がまったく書けません」という内容のものがあります。租税法の勉強を初めて間もない段階では、書かれている内容が全て正しいと思いがちになります。そこで、判例評釈を読んだら【論点整理表】を作成しましょう!
【論点整理表】では第1の論点についての判断や主張を裁判所、原告(納税者)、被告(国)ごとにまとめます。また、学説や過去の判例では、どのように判示していたのかについて各審級別に書き出します。このようにまとめていくことによって、それぞれの考え方の細かい違いが分かるようになります。つづいて第2の論点、第3の論点についても同様に整理します。一番手間のかかるところですが、論点整理表を作成することで研究計画書をスムーズに書き進めることができるので頑張りましょう(口頭試問対策にもなります)。
判例評釈を読んでいて内容が掴みにくい時は、段落や文章にスラッシュを入れる、気になる文章に蛍光ペンで色を付けておくなどの工夫をされると読みやすくなりますよ。

●終わりに

大学院入試をきっかけに租税法の勉強を始められた受講生の方が多いと思いますが、約半年で研究計画書を完成させる必要があります。文献の読み方、論点整理表の作成の仕方、研究計画書の書き方など、初めて取り組まれることが盛り沢山かと思います。些細な事でも大丈夫ですので何かお悩みの際はチューターに相談するようにしてください。きっと目の前のやるべきことが整理されると思います。
また、大学院の出願に備えて提出書類についても確認しておいてください。大学の入学説明会なども開催されますのでそちらも可能な限り参加しましょう。