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VOL.3 研究計画書 発展編

2023年度
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チュートリアル通信では、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください


研究計画書 発展編

新大阪校チューター:二木 

◆はじめに

研究計画書の作成は順調に進んでいますでしょうか。今年の税理士試験を受験される方はこれからが山場です。スケジュール管理をしっかりと行って効率良く勉強を進めていきましょう。今回は研究計画書の仕上げ段階に役立つ情報をお届けします。初めて知る内容もあるかもしれませんが、この機会にご自身の研究計画書に反映させてより良いものに仕上げていきましょう。研究計画書作成が思うように進まない方はチューター相談をぜひご活用ください。

◆研究計画書の構成(続編)

前回のVOL.2研究計画書 基礎編では研究計画書の構成についてお伝えしました。今回は続編として各項目のボリューム(文字数)として適切なバランスをお伝えします。研究計画書の構成の参考にしてください。
※あくまでも私の考える構成であり、志望校指定のフォーマットによってもバランスが変わります。個別指導時に確認し、講師の指導に従ってください。

【研究計画書の構成】(全体を3,000字とした場合)
(1)はじめに
    ① 研究動機・・・・・・・・・・・・・250字
    ② 研究の目的・成果・・・・・・250字
(2)先行研究
    ① 判決(事件)について・・・500字
    ② 検討・・・・・・・・・・・・・・・・1000字
(3)まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・500字
(4)今後の研究計画・・・・・・・・・500字

研究計画書の中でご自身の考えを主張できる項目は、主に(2)②検討、(3)まとめの2つになります。この2つの項目に重きを置いて研究計画書の構成を考えてみましょう。

◆見た目の美しさ

見た目の美しさとは体裁が整っているかどうかです。例えば、段落の先頭が空白1マス入れて頭が下がっていて、それが全体を通して統一されているのが整っている状態です。研究計画書の見た目は受験生の皆さんが考えている以上に大切です。何十、何百人の受験生全員分の研究計画書を試験官(教授)が隅々まで目を通すことは可能でしょうか。研究計画書は恋愛と一緒で、まずは第一印象が大事です。外見が整っていて所作の丁寧な人(研究計画書)だったら、もう少しこの人のこと知りたいなと興味を持つでしょう。もちろん研究計画書の内容が充実していることも重要ですが、まずは見た目で減点されないことが大事なポイントなのです。見た目を美しくするには何に気を付けたらよいのでしょうか。

(1)フォントを統一する
基本としては、本文は明朝体10.5ポイント、見出しはゴシック10.5ポイントがよいでしょう。指定されている訳ではありませんので多少の違いは大丈夫ですが、全体を通して統一すると整った文章になります。また、脚注を使う方は9ポイントぐらいにするときれいになります。その他、キーワードを太字にしたり下線を引いたりすることもできますが、多用しすぎるとかえって読みづらくなりますので注意してください。

(2)タブ、インデントを使う
各段落の頭で一字空白を入れて頭が下がっているのが整った文章です。Wordでは画面上部のルーラーを使ったタブ、インデント機能を使うときれいなレイアウトが調整できますので試してみてください。書式のコピー/貼り付け機能(Ctrl+Shife+C/ Ctrl+Shife+V)も使いこなせると便利です。

(3)適度な行数での段落分け、簡潔なタイトル
研究計画書の構成について目安となる文字数をお伝えしましたが、特に(2)先行研究②検討、(3)まとめについては論点ごとに適度な行数での段落が分けと簡潔なタイトルを意識しましょう。この項目については筆者の考えを論理的に整理して書く必要があります。全体のバランスを考えながら論点ごとのボリューム感とタイトルの整合性も検討しながら整理しましょう。

(4)「である調」で統一する
論文では「である調」(「~である」が文末にくる文体)で書くのがルールです。「である調」は断定することにより説得力のある文章になるのが特徴で、文献などもすべて「である調」で書かれています。「です・ます調」と混在すると文章が読みにくくなり、文章が稚拙に見えてしまいますので気を付けましょう。志望理由書を書く際は口語体になりがちなので特に注意が必要です。

(5)誤字脱字がない
当然のことなのですが、内容を熟考して研究計画書を書いているとタイピングミスなどで誤字脱字が発生します。対策としてはWordの校閲機能を活用してミスを発見することができます。また一度完成したら何度も読み返して内容の齟齬がないか、引用ミスがないかなど確認しながらチェックしましょう。

(6)「?」「!」などは使わない
これらの記号は、英語などの外国語からの流用です。正式な日本語では使いません。

◆言葉の使い分け

法律論文の言葉の使い方は行政庁で使われる公用文のルールに従っています。用語の使い方が適切であれば、条文・規定などの複雑な文章を文理にそって正確に伝えることができます。法律の解釈を学ぶ際には言葉の使い分けは必須の知識です。代表的なものをご紹介します。

・「時・とき」… 「時」は、時間・時刻を表す場合に使い、「とき」は「…する場合」と言い換えられる場合に使います。
・「者・物・もの」… 「者」は、自然人(人間)および法人です。「物」は権利の対象になり「物件」「物品」で置き換えられるものです。「もの」はそれ以外のものです。
・「意思・意志」 …「意思」は「考え」とも置き換えられ、中立的で広義の考えです。「意志」は、何かをしたいとか、したくないというような、一定の方向性をもった考えを表します。法律論文の中では「意思」が使われることが大半になるでしょう。

その他にも、「又は・若しくは」、「及び・並びに」、「みなす・推定する」、「直ちに・遅滞なく・すみやかに」など、使い分けを確認しておきたい用語がいくつかあります。詳しくは以下の参考文献などをご確認ください。

参考図書
○ 吉田 利宏『新法令用語の常識[第2版]』(日本評論社、2022)

●参考文献リスト

研究計画書の末尾には参考文献リストを作成しましょう。参考文献リストの文字数は研究計画書の文字数に含まれないとするのが一般的です。本文で引用した文献だけでなく、引用はしなかったけれど参考にした文献についても参考文献リストに入れて問題ありません。少なくとも10件以上の参考文献をリストにしましょう。多ければ多いほど良いです。
取上げたテーマによって押さえておくべき重要な評釈がありますので、個別指導時に確認し収集するようにしましょう。租税判例百選(有斐閣)・租税法(金子宏著、弘文堂)で参考文献に上がっている文献については必ず目を通しておく必要があります。また、大学院説明会などで先生とお話しできる機会がありましたら、ご自身のテーマで押さえておくべき文献を質問してみるのも良いかもしれません。

◆おわりに

受験生の皆さんはいよいよ研究計画書作成の山場に差し掛かっている所と思います。項目によってはペンが進まずに苦労されているかもしれませんが、まずは研究動機や判決(事件)についてなど比較的書きやすい項目から進めてみましょう!どうしても進まない時は、1日置いてみると翌日には意外とスムーズに進む場合もあります。悩み事がありましたら1人で抱え込まずにチューターにご相談くださいね。