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VOL.4 小論文対策

2023年度
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チュートリアル通信では、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください


小論文対策

新大阪校チューター:竹村 

●小論文試験の目的

小論文試験の目的としては、設問の読解力と問われていることに対する記述能力を評価することにあります。記述能力の内容としては、論理的展開能力、文章構成能力、自身の意見の表現能力等が含まれます。すなわち、大学院入学後に修士論文を作成する能力があるかという点を審査しています。
これに関しては、『ケースブック租税法』や「租税判例百選」の判旨・評釈文、並びに各種テキストでの研究者の文章構成・表現方法、言い回し等を参考に真似てみるのも効果的な方法と言えるでしょう。

●過去問のタイプとその対策

次に実際の過去問に対する具体的な対策について述べてみます。
大きく分けて、次の2つのタイプに分けられます。

  1. 用語の説明 … ○○主義、○○原則等租税法の基本用語や訴訟で争点になるもの、あるいは時事的問題用語の説明を記述するもの。
    例)租税法律主義、その中の課税要件法定主義、課税要件明確主義、合法性の原則等
      収益計上に関する権利確定主義や管理支配基準等
      借用概念 …… 頻出用語です
      租税法の解釈のあり方、国際的二重課税、所得の帰属年度等々
        
    対策としては、過去の出題例や、これから出題が予想される用語について、租税法のテキストや税務会計用語辞典等を参考に自分でまとめてみることをおすすめします。
    参考書)金子 宏他『税法入門』(有斐閣新書)にわかりやすくまとめられています。
    他に、『税務・会計用語辞典』(財経詳報社)や金子宏『租税法』も参照。
  2. 事例問題 … 判例の判旨を読んで、それに対する考え方を記述するもの。
      対策としては、金子 宏他『ケースブック租税法』(弘文堂)、または「租税判例百選[第7版]」
    (別冊ジュリスト、有斐閣)をテキストとして、所得税か法人税のどちらかを選び、下記の要領で少しずつ記述練習して下さい。また、試験の1か月半前からは、志望校の実際の過去問で練習して下さい。
前置き(イントロダクション、ただしあれば)の後、
①論点(争点)抽出 ……原告(納税者)の主張と被告(課税庁)の主張を読んで、何が問題になっているのか
②要件を記述(例えば、不法行為が問題となっているのならその要件)
③当てはめ(具体的な事例の場合、本件がその要件に当てはまるか?)
④結論及び検証(裁判所の判断や考え方が社会通念=常識に合致するか?)
⑤問題点(研究者の指摘等、わかれば)
⑥他の考え方も可能か否か(条件を変えた場合等)
ここで、自分の意見・私案・提言等を記述してもよい

以下、離婚に際しての土地による財産分与に関する錯誤の問題が複数回出題されていますので、これを例に簡潔に説明します。
(前置き)「離婚に際しては、配偶者の生活保障という意味で財産分与が行われることが多い」
① 論点 ㋐ 「土地による財産分与への譲渡所得課税の是非」
     ㋑ 「課税処分に関して錯誤による無効主張の可否」
㋑について述べてみますと、
②要件「民法95条では、法律行為の要素に錯誤があったときは無効(’20年4月1日以降は「取り消し」に改正)とされている」 (民法を勉強のこと!)
   「ここでの『法律行為の要素』とは、契約での重要な点とされる」
③当てはめ「本件では原告(夫)側は、まさか自分に課税されるとは思ってもみなかった、ということが要素の錯誤に該当するのでは?」
④ 結論と検証「したがって、原告の錯誤無効を認めることに妥当性があるものと考える」
(バブル時の地価高騰時で評価額も高く、税額も2億円強であったため、原告自身に担税力もなかった事例です)
他に⑤は省略して、⑥の自分の意見として、「そもそも財産分与において分与者に課税することは社会通念として妥当か」「配偶者の生活保障という趣旨を考慮すれば、課税されることによって分与すること自体抑制されてしまうのではないのか」等々を記述しても良いと思います。上記の「 」内の文を幹に枝葉を色々と付け足して切れ味の鋭い文章にして下さい。必ずしも、上記の通り書く必要はないので、あくまで参考にして下さい。

それでは、ご健闘を祈ります。Do your best!