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心理・チュートリアル通信「研究計画書」(1)

2021年秋学期
河合塾KALS 臨床心理士指定大学院講座 チュートリアル通信
チュートリアル通信では、大学院に合格したKALSのチューターが、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報や、心理士事情など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。
心理・チュートリアル通信「研究計画書」

名駅校チューター : 落合  


こんにちは!
河合塾KALS名駅校チューターの落合と申します。
今回は「研究計画書について」です。研究計画は、多くの大学院受験生にとって悩ましいものではないでしょうか。自身の経験やチューターをしていて感じたことなどから、今回はQ&A方式でお伝えしてきたいと思います。

Q.研究計画書はいつ頃から取り掛かればいいの?

 基本的には「今すぐ」取り掛かることをオススメします!……とはいえ心理学をこれから学ぶ方などは、いきなり学術論文を読んでもわからない部分もあるとは思います。心理学の勉強を進めるうちに、用語がわかったり、研究方法や結果の読み取りができるようになったりしてくると思うので、その辺りは勉強を進めてからの方が取り掛かりやすいかもしれません。いきなり論文から取り掛からなくてもいいので、まずは「書籍」や「雑誌」、「新聞記事」などからでいいので、「自身の興味のあるテーマ」を探し始めましょう。
 チューターとの相談に来てくださった方の中にも、最初は新聞記事から自身の興味を見つけて、それに関連するような内容の論文を心理学に限らずにかき集めて、最終的に心理学分野ではどのような研究が進められているかというのを調べていった方もいらっしゃいました。一見遠回りに見えますが、自身の興味のあるものを片端から見ておくと、裾野が広がってより根拠の強い研究計画を立てることができると思います。
 「思考の整理学(ちくま文庫)」というベストセラー本の中に「セレンディピティ」という言葉が出てきます。一見関係がないような本や新聞記事を読み漁っていると、あるとき「!」と点と点が繋がるように、「気づき」が出てくることがあります。このような偶然性から新たな発見が生まれることが多いそうです。
 心理系大学院への進学を決めたら、まずは自身の研究テーマになりそうなことにアンテナをはって生活するようにしてみましょう。例えば、ノートを一冊作って、気になるキーワードを書き出しておいたり、読んだものの要約を簡単に記しておいたりすると良いかもしれません。
 というわけで、「今すぐ取り掛かるといい」と言ったものの、すぐに形にしようとするのではなく、関連しそうなものに色々と触れてみることで、「これだ!」と思える研究計画にできるかもしれないのです。そして「寝かす期間」を作るためにはやはり今すぐにでも取り掛かって欲しいなと思います。

Q.そもそも興味のあるテーマが見つからないのですが?

 「なぜ公認心理師・臨床心理士になろうと思ったか」というところを振り返ると良いと思います。わざわざ大学院に進んでまで心理学を学ぼうとされているのには各々何かしらの想いがあってのことと思います。そこに研究したいことがあるでしょう。
 しかし、気をつけてほしいのは、「自身の経験に直面化しすぎない方が良い」かもしれません。「傷ついた治療者」なんて言葉がありますが、臨床心理学を志す人の中には自身の傷を持つ人も少なくないと思います。ただそれをそのまま大学院での研究テーマに持ってくると、2年間それと向き合う必要が出てきます。それを考えると大変かもしれないと思った方は、自身と距離を置いて研究を進めることができそうなテーマを探すと良いでしょう。科学的研究においては「客観性」も重要になりますので、「距離を置きつつも、興味を持てるもの」であることが必要です。そのためには、「どんな心理職になりたいか」と未来志向の想像をしてみることも有効かもしれません。
 特に現役生の皆さんはある程度「自身と向き合う必要がある」ことは覚悟しなければならないかもしれません。就職活動でも「自己分析」から始めるように言われてしまいますから、もうこれはある程度「そういう時期がきたのだ」と割り切る必要があるでしょう。

Q.どうやって論文を探せばいいの?

 日本語論文ならCiNii、医学系論文ならPubMedなど定番がありますが、探す当てがない人は、最初はGoogleScholarで検索でもいいと思います。ひとつ興味のある論文・書籍をみつけたら、今度はその参考文献・引用文献の中からまた読みたい物を見つけます。こうやって「参考文献・引用文献サーフィン」を繰り返していると、必ず引用されている論文・書籍がわかってきたり、いつも名前が挙がっている研究者の方がわかってきたりします。
 そして一つの分野についての全貌が徐々に見えてくると、「その中で自分がどのような研究がしたいか」ということが見えてくるのではないでしょうか。

Q.研究として形にできない・とにかく時間がない

 ある程度情報が集まってきたら、先行研究を参考にしながら研究計画を立てましょう。といわれても困るかもしれません。独学ですすめる場合のおすすめ書籍は「公認心理師・臨床心理士大学院対策鉄則10&サンプル18研究計画書編(KS専門書)」になります(急に宣伝!?)。
 KALS生の皆さんは「研究計画書相談」を活用しましょう。「1人で考えるより誰かに話した方が考えが整理される」というのは、カウンセリングの前提にもなると思います。
頭の中でぐちゃぐちゃだったものが、「話してるうちに研究の方向性が見えてきた」という経験をしている先輩は多いです。先ほどの「寝かせる」話と矛盾するようですが、「色々気になるキーワードが出てきたが全く形にできる気がしない時」や、「もう提出期限まで時間がないという時」は、「形にしてから…」と先延ばしにせず、手書きで今考えてることを箇条書きにしてくるとかいいので「研究計画書相談」を利用してみましょう。

 以上、「研究計画書について」書いてきましたが、「テーマ決め」について分量をとりすぎました。しかしこの「テーマ決め」が最初にして最大の難関で、できればここに時間をかけれるのが理想だと思っています。いきなり研究テーマを絞るのではなく、少し広めにその分野について色々知っておく。ベタですが「高い山ほど裾野が広い」というやつです。
 また、誰かに相談したい時はチューターもお役に立てると思うのでぜひ活用してくださいね!それでは。