ブログ

心理・チュートリアル通信「専門科目(心理学)の学習法」(1)

2021年秋学期
河合塾KALS 臨床心理士指定大学院講座 チュートリアル通信
チュートリアル通信では、大学院に合格したKALSのチューターが、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報や、心理士事情など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。
心理・チュートリアル通信
「専門科目(心理学)の学習法」(1)

新宿本校チューター : 宮内  



皆さんこんにちは、新宿本校でチューターをしています宮内裕介です。
今回は、200字語句説明の勉強法を解説します。語句説明の勉強は論述問題だけではなく、穴埋め問題や選択問題にも対応できる高い応用性があります。
皆さんが受験までの限られた時間で、より多くの語句をマスタ-できることを目的に解説していきます。


200字語句説明勉強法

  1. 200字語句説明用のノートを作成する
  2. 200字語句説明は 定義 ・ 補足説明 ・ キーワード に分解する
  3. 勉強法は 書く ・ 声に出す ・ 黙読する ・ 聞く を使い分ける
  4. 1つの語句に対する暗記量を減らす - キーワード圧縮暗記法 -
    例題 「 自閉スペクトラム症 」
  5. 1つの語句に対する暗記量を減らす - ロジック解答法 -
    例題 「 第1種・第2種の誤り 」

1. 200字語句説明用のノートを作成する

200字語句説明は専用のノートをつくっておくと便利です。KALS100 (鉄則10&キーワード100 講談社) などの参考書で勉強はできますが、学習が進むにつれて、語句数は100から200、300と増えていきます。ルーズリーフの様な後から差し込みができるノートを使って、ジャンルごとに分けていきましょう。全ての語句は、どこかのジャンル (統計、発達心理学、社会心理学、臨床心理学、心理療法、精神疾患など) に属することになります。1つの語句を見て、どのジャンルに属するものなのか分かるセンスは、受験校の出題傾向を分析するときに必要になります。ノートはジャンル分けのラベルを付けて、1ページを左右対象に使います。左側に語句、右側に模範解答を書いていきます。授業中に出題される語句も付け加えていきましょう。模範解答を貰ったときは、そのまま切り抜いてノートに貼り付けるのもOKです。


2. 200字語句説明は 定義 ・ 補足説明 ・ キーワード に分解する

200字語句説明は定義と補足説明で構成されています。前文が定義で、後文が補足説明です。前文の定義はなるべく模範解答に近い解答ができるように勉強します。後文は、そこに含まれるキーワードに注目しましょう。キーワードを確実に覚えて、それをつなげて補足説明文が書けるようにします。院試では、200字で説明する問題と定義だけ説明する問題の両方が出題されます。定義 + 補足説明で勉強することで、どちらにも対応できるようになります。


3. 勉強法は 書く ・ 声に出す ・ 黙読する ・ 聞く を使い分ける

200字語句説明は、上記4つの方法のどれかで勉強することになります。4つの順番は、勉強の効果が高く、負担が大きい順番に並べてあります。1つの語句説明をノートに書いてみて、模範解答と比べてみるのが最も効果が出るとは思います。ただ、書く作業は、集中できる時間と空間、体力が必要です。院試の勉強の他に、家事や仕事を両立しなければならない受講生には負担が大きくなります。勉強したくても、疲れていて書く気力が無いときは、別の方法を試してみましょう。200字全文を書くのではなく、定義とキーワードだけ書いてみる、書く代わりに声に出して語句説明してみる、模範解答を読んで覚える等です。聞く方法は、自分で模範解答を読みあげたものを録音して聞くことです。自分の声に違和感があっても、徐々に慣れてきます。受験までの限られた時間や制限の中でも、学習を進めることができる方法を試してみてください。


4. 1つの語句に対する暗記量を減らす - キーワード圧縮暗記法 -

解答できる200字語句説明を増やしていくには、1つの語句説明に対して暗記する文言を最小限にする工夫が必要になります。語句説明100問であれば、なんとか丸暗記できるかもしれませんが、院試の合格水準には300語句程度が必要とされます。丸暗記での対応は難しいです。暗記量を減らしていく方法として、キーワード圧縮暗記法を紹介します。

例題 「 自閉スペクトラム症 」 語句説明の解答例
自閉スペクトラム症は、社会的コミュニケーションと対人的相互反応における持続的な欠陥と、行動・興味または活動の限定された反復的な様式の2つの症状であり、後者には感覚刺激に対する過敏さと鈍感さが含まれる。Wing,L.は「社会性」「コミュニケーション」「想像力」を問題として「三つ組の障害」と呼んだ。原因としては脳の機能障害と考えられており、支援策としてはSSTやTEACCH、応用行動分析が有効であると考えられている。 (195文字)

(1)赤文字の定義文から暗記するキーワードだけを取り出して圧縮します。

①社会的コミュニケーションと対人的相互反応における持続的な欠陥
圧縮 → 社コ (しゃこ) と対人的相互作用の持続欠陥
②行動・興味または活動の限定された反復的な様式
圧縮 → 行 興 活 (こうきょうかつ) の限定反復様式
③感覚刺激に対する過敏さと鈍感さ
圧縮 → 感覚過敏と鈍感

(2)後文の補足説明から暗記するキーワードだけを取り出して圧縮します。
①Wing,L.「社会性」「コミュニケーション」「想像力」
圧縮 → ウイングの「社」「コ」「想」 ( ウイング しゃこそう )
②原因は脳の機能障害
③支援はSSTやTEACCH、応用行動分析

(3)圧縮したものを並べ直してみます。
定義文
①社コと対人的相互作用の持続欠陥
②行 興 活の限定反復様式
③感覚過敏と鈍感
補足説明
①ウイング 社 コ 想
②脳の機能障害
③SST、TEACCH、応用

上記の定義3キーワードと補足3キーワードが暗記する対象になります。この6つのキーワードをつなげて200字語句説明を再現できるようにします。圧縮するときはルール決めを行い、間違いを防ぎます。「コ」→コミュニケーション、「社」→社会性、「想」→想像力。


5. 1つの語句に対する暗記量を減らす - ロジック解答法 -
次に、ロジックを覚えて暗記量を減らす方法を紹介します。

例題 「 第1種・第2種の誤り 」 語句説明の解答例
第1種の誤りとは本来真である帰無仮説を棄却することであり、第2種の誤りとは本来偽である帰無仮説を棄却しないことである。第1種の誤りを犯す確率は有意水準と等しい。有意水準が高いほど帰無仮説を棄却しやすくなる反面、第1種の誤りを犯しやすくなる。有意水準が低いほど帰無仮説を棄却できなくなり、第2種の誤りを犯しやすくなる。有意水準は高すぎても低すぎても誤りのリスクを高めるため、5%や1%に設定することが多い。 (200文字)

第1種・第2種の誤りは、院試頻出の統計問題です。この問題は仮説検定のルールを理解していれば、暗記量を極端に減らすことができます。
(1)仮説検定のルール
①仮説検定は「差がない」帰無仮説からスタートする
②帰無仮説が棄却されたときは、自動的に対立仮説が採択
③対立仮説が棄却されることはルール上、無い
④第1種の誤りは供給側の損失、第2種の誤りは消費側の損失
⑤真である帰無仮説を棄却する確率(危険率)は、有意水準と等しい

上記の仮説検定のルールを理解していれば、暗記するのは下記の2文になります。

定義文 ①第1種の誤りとは本来真である帰無仮説を棄却すること
補足説明 ②第1種の誤りを犯す確率は有意水準と等しい

仮説検定は帰無仮説を棄却するかどうかの検定なので、棄却される可能性の無い対立仮説を中心に論じる必要はありません。①第1種を覚えていれば、第2種はその逆を書けば良いだけです。第1種と第2種の意味を取り違えないように、第1種は規格合格品を捨ててしまう供給者側の損失で、第2種は捨てられるはずの規格外品を使わされる消費者側の損失という理屈を覚えておきましょう。②第1種の誤りを犯す確率は有意水準と等しいので、有意水準が高いと(棄却される範囲が拡がるので)第1種の誤りを犯しやすくなり、有意水準が低いと(棄却される範囲が狭まるので)第2種の誤りを犯しやすくなると、理解できると思います。
この語句説明は上記のロジックを理解すれば、最低限の暗記量で200字を完成させることができます。


以上が200字語句説明の勉強法です。2つの例題を書きましたが、どちらも他の語句説明への応用が可能だと思います。より少ない暗記量で、より多くの語句説明問題に対応できるよう工夫してみてください。
― 以上 ―