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小黒チューター(新大阪校)第8回「発達障害について」

チュートリアル通信
発達障害について



大阪校 心理系チューター 小黒

 みなさん、こんにちは。新大阪校のおぐろです。
今回は、テーマとして「発達障害」を取り上げたいと思います。

発達障害は、現在、臨床心理学や様々な分野で盛んに研究が進められています。
また、KALSの受講生の研究計画書のテーマとして、非常に関心が高いものです。

みなさんが大学院を受験されるうえで、発達障害について理解しておいていただきたい内容は広範囲に渡ります。
ですが、一度にお伝えできる内容に限りがありますので、今回は、発達障害の定義と特性に簡単に触れ、その後、入試の出題形式に沿ってポイントを説明していきたいと思います。







◆発達障害とは?

「発達障害」という言葉は、日常生活でもよく耳にすると思います。では、発達障害とは、いったい何なのでしょうか?
発達障害は、以下の様な定義があります。

発達障害者支援法(平成17年度施行)では、
「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
分かりやすくいうと、幼少期から主に認知や行動面で発達の遅れが見られることを発達障害といいます。

世界的に使用されている診断基準として、米国精神医学会によるDSM(現在DSM-5)があります。
この中では、先程の定義の中に出てきた「広汎性発達障害」は「自閉スペクトラム症(ASD)」、学力の特異的発達障害である「学習障害」は「限局性学習症(SLD)」と呼ばれています。

また、先程は含まれていなかった「知的能力障害群」というカテゴリーも発達障害の中に含まれます。
DSMで使用されているカテゴリーは、大学院入試において比較的取り上げられることが多いです。
その中でも、DSM-5以降、名称が変更になった「自閉症スペクトラム症」というキーワードは頻出です。

以下では、DSM-5の内容にも触れながら、それぞれの障害の特性を説明していきたいと思います。






◆それぞれの障害の特性
(厚生労働省の政策レポート『発達障害の理解のために』参照)

①広汎性発達障害
(DSM-5以降では,「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」と呼ぶ。)
(1)自閉症
・言葉の発達の遅れ
・コミュニケーションの障害
・対人関係・社会性の障害
・パターン化した行動、こだわり

(2) アスペルガー症候群
・基本的に、言葉の発達の遅れはない
・コミュニケーションの障害
・対人関係・社会性の障害
・パターン化した行動、興味・関心のかたより
・不器用(言語発達に比べて)

※スペクトラムとは連続体という意味をもつ。連続体とは明確な境界線のない、大きな枠組みのことです。
程度の差はあれ同じ特徴を持った連続体であるというウイングの考えに基づき、カテゴリー分類を廃したものが、DSM-5以降で使用されている「自閉スペクトラム症」です。

②注意欠陥多動性障害(AD/HD)
・不注意
・多動・多弁
・衝動的に行動する

③学習障害(LD)
(DSM-5以降では,「限局性学習症/限局性学習障害」と呼ぶ。)
・「読む」、「書く」、「計算する」等の能力が、全体的な知的発達に比べて極端に苦手

④知的能力障害群
知的能力障害群とは、「知的機能の水準の遅れ、そしてそのための通常の社会環境での日常的な要求に適応する能力が乏しい」(ICD-10)と定義されています。

ここまで、「発達障害」がどういったものであるかを簡単に説明してきました。
詳しい内容については、多くの参考書に載っている内容になりますので一度確認してみてください。



◆大学院入試での出題
では、大学院入試では、上記の内容がどのように出題されるのでしょうか?
出題形式としては、以下の様なものがあります。
(1) 用語説明
(2) ある事象の原因や機序、相違についての説明
(3) 事例

(1) 用語説明
発達障害に関する用語説明は、多くの大学で出題される可能性が高いです。一つの用語を200字程度で説明できる様にしておきましょう。
頻出用語:・発達障害
・自閉スペクトラム症
・ウイング
・特別支援教育
など

(2) ある事象の原因や機序、相違についての説明
ある事象が起こる原因や機序、また二つの立場の違いを説明させる問題です。(1)の用語解説に加え,それぞれの心理学の分野の深い知識、ある事象の分野ごとの捉え方を理解して論述することが求められます。
選択問題の場合もあり、大学院ごとに出題される分野の傾向が異なります。過去問分析をおこない、その分野については論述できる様にしておきましょう。

問題例:
・自閉スペクトラム症の特徴を説明し、二次障害とその原因について考えられることを述べなさい。
・[ディスレクシア、角回、左側頭葉後下部]の用語を用いて論述を完成させなさい。

(3) 事例
学校や会社などでの事例場面が設定され、その事例における具体的な援助方法を論述させる問題です。
(2)の、ある事象が起こる原因や機序を理解したうえで、臨床場面での具体的な関わり方や援助方法などの知識の有無が問われます。

発達障害を援助するうえで、立場の違いによりアプローチも異なってきます。論述の際には、どういった立場からの視点かに触れ、そのあとに具体的な援助方法について述べるとより理論的な印象の回答になります。

キーワード例:
立場の違い
・療育
・教育(特別支援教育 など)
・行政(発達障害者支援法 など)

発達障害の援助方法
・環境の構造化
・ソーシャルスキル・トレーニング(SST)
など



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回お伝えした内容を参考に、学習を進めていただければと思います。
疑問点のある方は、いつでもご相談くださいね。

まだまだ、寒さ日が続きます。
体調に気をつけながら、試験に挑んでくださいね。
陰ながら応援しております。