MBAチュートリアル通信

チュートリアル通信11月号 KBSとWBSの違いとそれぞれの特徴

2020年度MBAチュートリアル

河合塾KALSの大学院入試対策講座では、チューター制度を導入しています。授業での合格指導のみならず、受講生向け学習ガイダンス「サクセスチュートリアル」や個別相談(カウンセリング)などを通じて、進路・志望先に関すること、自主学習に関することなど、合格に向けてきめ細かくアドバイスをしています。以下は、MBAチューターから皆さんへのメッセージです。今後の受験対策のご参考にしてください!


◎はじめに
日本国内の大学において、常にライバル関係にあるのが早稲田大学と慶應義塾大学だと思います。では、ビジネススクールにおいて、両校はライバル関係にあるのでしょうか?今月のチュートリアル通信では、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)と早稲田大学大学院経営管理研究科(WBS)の違いと特徴について書いていきます。

◎歴史
 まずKBSの歴史から見ていきましょう。KBSの歴史は1956年に開催された第1回慶應・ハーバード大学高等経営学講座から始まります。これは主に総合的な経営管理能力をもつ最高経営幹部(トップマネジメント)の育成および再訓練を目的として開講されたもので、ケースメソッドによる多角的・現実的な判断力と意思決定能力の向上を狙いとしています。第1回目の実施から64年経った今でも高等経営学講座は毎年開催されています。なお、これはあくまでセミナーという位置づけで、学位が出ないノンディグリープログラムです。
 学位が出るプログラム、すなわち、大学院経営管理研究科修士課程としてのKBSが発足したのは1978年のことです。この年に入学した学生をM1と呼び、以降1979年入学の学生をM2、1980年入学の学生をM3と呼んでいきます。2019年に入学した私はM42です。その後、KBSはカリキュラムをどんどん充実させていきます。1988年に国際単位交換プログラムを発足させ、1991年には後期博士課程を開設します。2000年には国際認証AACSBを、2011年には国際認証EQUISを取得しました。いずれも日本国内のビジネススクールで初となる出来事です。2015年には職務経歴が通算15年以上の方を対象としたExecutive MBA(EMBA)を開設し、現在に至ります。
 次にWBSの歴史です。WBSの歴史は1973年のシステム科学研究所のノンディグリービジネススクールから始まります。1998年より「大学院アジア太平洋研究科国際経営学専攻」として学位を授与するMBAプログラムが設置されました。2006年にはシンガポールの南洋ビジネススクールとWBSの両校のMBA学位が取得できるダブルMBAプログラムをスタートさせ、2007年4月には、大学院商学研究科プロフェッショナルコースのMBA夜間主プログラムとの統合を経て「大学院商学研究科ビジネス専攻」として新たな体制のビジネススクールを誕生させます。
一方で、2004年4月に金融ビジネスの中心地である日本橋に金融を核とする高度専門職業人の育成を目的としたMBAプログラムを提供する「大学院ファイナンス研究科」が開設されました。2016年4月に大学院商学研究科ビジネス専攻と大学院ファイナンス研究科の二つの専門職大学院が発展的に統合し、「大学院経営管理研究科」が誕生しました。

◎プログラム
 次にプログラムの違いについて見ていきましょう。まず、WBSからです。WBSのプログラムを一言で言えば、多様なニーズに応えていることだと思います。カリキュラムは、全日制グローバル、1年制総合、夜間主総合、夜間主プロフェッショナルの4つに大別できます。働きながら勉強したい、キャリアを中断して勉強に集中したい、1年間でMBAを取りたい、特定の分野に特化して勉強したい等あらゆる学習のニーズに応えていると言えるでしょう。KBSもフルタイムMBA及び土曜日中心のEMBAの2つのプログラムがあります。WBS同様、キャリアを中断して勉強に集中したい、働きながら勉強したいというニーズには応えていると言えます。
 こういうと両校のプログラムに違いがないように思えますが、力の入れどころはかなり違うようです。WBSは様々なプログラムがありますが、公式に「夜間を強化する」と明言しています。つまり、WBSのメインターゲットは就業中の社会人と言えます。KBSもEMBAがありますが、メインはフルタイムMBAとなります。つまり、キャリアを中断して勉強する方々をメインターゲットとしています。したがって、WBSとKBSはある程度棲み分けができていると言えます(必ずしもライバルではない)。

◎教員
 教員についてはKBSとWBSでは大きく異なる点があります。KBSの教員は全員博士課程を修了しています。学術の世界でしっかりと業績を残している人がKBSで教鞭を取り、研究をしていると言えるでしょう。WBSにも博士課程を修了した教員が多くいますが、それだけではなく実業界で活躍した方が教員になっている場合も多いようです。例えば、外資系コンサルティングファーム出身の教員が在籍しています。ビジネスの世界にどっぷり浸った方々から学べる示唆も多いと思います。

◎試験対策
 WBSあるいはKBSに合格するために、特別な試験対策が必要になるのでしょうか?私の答えは否です。WBS、KBSだからと言ってイレギュラーな対策をする必要はありません。チュートリアル通信Vol.2~Vol.4でお話しした通り、書類選考、筆記試験、面接をクリアすれば両校に入学できます。
 ここで注意して欲しいのが筆記試験です。WBS、KBS共に経営学の知識問題は出題されません。ただ、それが意味するのはどんな問題が出題されるか分からないということです。ある年は課題文に対する自身の考えを書かせたり、別の年には図表の読み取り問題が出たりと、出題傾向に法則があるわけではないです。したがって、受験生はどんな問題が出題されても解答できるように、あらゆる問題に慣れておく必要があります。

◎終わりに
 いかがでしょうか?WBSとKBSを歴史、プログラム、教員、試験対策の観点から見ていきました。正直に言うと、両校の違いや特徴はここには書ききれないほどあります。より詳しいことは各学校のウェブサイトを見るようにしてくださいね。また、今年度のチューターにはWBSとKBSで学んだ人がいます。学校の雰囲 気や授業の様子などウェブサイトでは分からないことは是非チューターに質問してくださいね。お待ちしております!

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