MBAチュートリアル通信

チュートリアル通信3月号 MBAって何だろう?その価値とは?

2020年度MBAチュートリアル

河合塾KALSの大学院入試対策講座では、チューター制度を導入しています。授業での合格指導のみならず、受講生向け学習ガイダンス「サクセスチュートリアル」や個別相談(カウンセリング)などを通じて、進路・志望先に関すること、自主学習に関することなど、合格に向けてきめ細かくアドバイスをしています。以下は、MBAチューターから皆さんへのメッセージです。今後の受験対策のご参考にしてください!


◎ はじめに
2019年3月末に思い切って会社を退職し、同年4月にKBSに入学して早くも2年経とうとしています。長いようで本当に短い2年間でした。私が執筆する最後のチュートリアル通信では、2年間のMBA生活を振り返りつつ、MBAの価値を皆さんにお伝えできればと思います。未だにMBA不要論が根強く展開される日本社会ですが、私の結論は、MBAには間違いなく価値があるというものです。

◎ 膨大なワークロード
 2019年4月に晴れてKBSに入学し、私が最初に思ったことは、「仕事している方が楽だ」というものでした。2019年4月1日、パシフィコ横浜での入学式終了後、日吉キャンパスで各種説明を受け、翌4月2日からは下田で5泊6日の合宿というスケジュールが組まれていました。
合宿と聞くと、顔合わせしつつ、みんなで交流をするものを想像しますが、KBSの合宿にはそういうのは一切ありません!ホテルに着いて早々TOEFL PBTのテストを受け、その後ケースメソッドのお試し授業があり、夕食後は4月3日から授業開始に備え、ケースの予習をする必要がありました。それから合宿最終日の4月7日まで午前1ケース、午後1ケース、夕方以降は翌日のケースの予習というサイクルをひたすら回します。このスケジュールは勉強の場所を日吉に移してからも変わることはありません。
ケースはただ読むのではなく、書いてあることをしっかり理解し、教員から事前に設定された質問に対して自分なりの回答を用意し、ディスカッションに備える必要があります。それに加えて、個人レポートの執筆、グループ発表、定期テストと多くのインプットとアウトプットを求められます。授業時間外の活動も多いということですね。会社であれば、オフィスを退社すれば自由時間ですが、MBAの場合は四六時中何かしら作業しています。この意味で仕事をしている方が楽ということですね。
これほどのワークロードをこなしていく意味はどこにあるのでしょうか?皆さんご存知の通り、MBAは一流のプレーヤーを育てる場所ではありません。言い換えると、敏腕営業マン、凄腕のプログラマー、公認会計士、弁護士、プロの投資家を養成するところではないです。MBAは企業や組織のトップとしていかに意思決定するかを訓練する場、つまり、リーダーを育成する場なのです。組織の上に立てば立つほど様々な難しい局面で意思決定をする必要があります。その手助けとなるよう、頭の中に多くの事例を叩きこみ、膨大な量のケースと課題をこなしていくのです。課題や難題を事前に知り、自分なりに解決策を考えることで、自身が実際にそのような局面に直面する際に適切な判断をできるよう訓練するんですね。

◎ 仲間との絆
 MBAに入ると間違いなく人脈は広がります。私の例を言うと、前職の海運会社で主として築ける人脈は、商社、船主、造船所といったところでしょうか?KBSに入学して驚いたのは本当に多様なバックグラウンドを持つ仲間に出会えたことです。製薬会社のMR、システムエンジニア、韓国の一流企業に勤めている人、上海の銀行に勤めていた人、人事コンサルタント、証券マン、銀行マン、日用品や食品メーカー出身者、建設会社出身者、事業継承予定の人たち、海外の一流ビジネススクールからの交換留学生など、前職でただ漫然と仕事をしているだけでは絶対に出会えない仲間たちに出会えました。
 当然のことながら、彼らとはただ出会って終わりではなく、グループディスカッションやグループワークを通じて様々な活動をしていきます。私が知らない世界を見せてくれたり、逆に私が皆に知見を共有する場面もあり、双方切磋琢磨し、学び合いました(慶應義塾ではこれを「半学半教」と言います)。もちろん、勉強のみならず、飲み会や旅行等で親睦を深めることもできました。
 正直、仲間無しにはMBAは成り立たないと言っても過言ではないでしょう。きついワークロードをこなしていくには、仲間のサポートは必要不可欠です。一人では間違いなく心が折れます。仲間と知恵を出し合い、時には愚痴をこぼしつつ課題をしっかりこなしていくことで、一回りも二回りも成長した自分に出会えるでしょう。

◎ MBAは価値がある
 MBAは欧米の企業でマネージャーになるのに必須な学位ですが、日本ではまだまだMBAの地位は盤石ではありません。「勉強なんかしている暇があったら、新規顧客を獲得してこい」「君にはMBAは必要ない。愚直に業務をこなしていけ」というのが多くの企業の本音であることも事実です。しかし、本当にそれで良いのでしょうか?
 日本企業が元気だった1960年~1990年まではMBAは必要なかったかもしれません。マネジメントを勉強せずとも、日本製品は世界中で売れ、日本企業は稼ぐことができました。ところが、バブル崩壊後、日本企業の地位は落ちるばかりです。日本企業の得意分野は新興国の企業もできるようになったのです。それも、安く、かなり高品質に。この原因は様々な言われておりますが、前例踏襲を良しとし、変化に合わせた意思決定や組織運営を怠ってきた結果ではないでしょうか?つまり、しっかりとしたマネジメント教育が為されなかった結果と考えます。
 私たちが今後直面する世界は今まで以上に不確実に溢れていきます。グローバルレベルでの競争、デジタルトランスフォーメーション、コロナや天災に代表されるような天変地異など枚挙に暇がありません。旧態依然としたやり方では太刀打ちできないでしょう。そのような環境下で適切な道筋を描くためにも、MBAで一流の教授陣やレベルの高い学生と共に、リーダーとして意思決定をする訓練を受けることは非常に有意義であり、価値があると考えます。今後、1人でも多くの方々がMBAを目指し、学びを社会に還元していくことを願っています。そうすれば、日本企業はまだまだ戦っていけると信じています。

◎ 私の今後
2021年4月より、再び海運業に戻ることとなりました。前職も海運だったので、職務経験を活かせるというのもありますが、MBAの学びを活かせることも海運に戻る理由です。海運業は伝統的にジョブローテーションを行う業界です。営業のみならず、様々な部署で活躍することが求められます。MBAで学んだ広範な知見がきっと役立ちます。さて、12回に渡るチュートリアル通信をお読みいただき、ありがとうございました。皆さんのMBA生活が実りあるものになるよう願っています!