MBAチュートリアル通信

チュートリアル通信7月号 研究計画書の書き方

2021年度MBAチュートリアル通信

河合塾KALSの大学院入試対策講座では、チューター制度を導入しています。授業での合格指導のみならず、受講生向け学習ガイダンス「サクセスチュートリアル」や個別相談(カウンセリング)などを通じて、進路・志望先に関すること、自主学習に関することなど、合格に向けてきめ細かくアドバイスをしています。以下は、MBAチューターから皆さんへのメッセージです。今後の受験対策のご参考にしてください!


◎「研究計画書」に書くこと
研究計画書は、ビジネススクール(以下、BS)によって個性があります。
履歴書のような、どこにでも使える「研究計画書」というフォーマットがあるわけではありません。
ですが、ほぼ共通して書く内容があります。

1.志望動機(これまでの実績を含む)
2.キャリアゴール
3.研究テーマ

です。

BSによって、研究計画書そのもののボリュームや、各項目のボリュームは異なりますが、
試験官はこの点を見ています。
では、それぞれ詳しく見てみましょう。

1.志望動機(これまでの実績を含む)
一見簡単なようですがBSで求められるのは、企業の面接で問われる志望動機とは異なります。
まず、何を書くか。手順として①~④のように考えていきます。
①自分自身がこれまで働いてきた中での「課題」を思い起こしてみましょう。
②その課題に対して、何かしら動いたり工夫をしたりしたことを思い出してみましょう
(課題を解決せずに棚上げしていた場合、それは傍観者であり、エピソードとしては弱い)。
③そのときの成果・結果はどのようなものであったでしょうか。営業職であれば、売上や利益が上がった、
購買部門であればコストが削減できた、総務など管理部門であれば工数・時間の削減ができたなど
何かしら変化があったはずです。
④課題に対して対策を打つとき、こうなったら良いという理想の状態があったはずです。
その理想の状態と実際の成果・結果の乖離はどのくらいだったでしょうか。
④において、十分満足がいく結果が出せたという人はいないと思います。思い通りに行かなかったから、自分に足りないものを伸ばしたい、力をつけたいと思い、MBAを志したのではないでしょうか。
このように、自分のこれまでの業務において、どんな壁(課題)にぶち当たり、どう工夫して乗り越えたのか。もっと成果を出すために、MBAでこんな力を身に付けたいのだ、と言えることが必要です。

2.キャリアゴール
仮にあなたが今、勤めている会社の営業課長だったとします。「キャリアゴールは営業部長」であれば、それはMBAに2年間費やすより、営業の仕事に費やすべきです。寝る間も惜しんで競合他社を研究し、キーマンへの接触を試みる、効率的に新規顧客へ接触する方法を練るなど、成果を上げることを第一にしてください。今の仕事の延長にあることをキャリアゴールに設定するのでは、2年間、むしろ今の仕事の時間を減らしてまで学ぶ必要はありません。
今のままではたどりつけないキャリアにたどり着くために2年間学びに費やすのです。
例えば、短期的には部長として営業部門を統括するとしても良いのですが、最終的には会社の経営方針を決める経営陣として活躍する・海外で起業する・家業を継いでさらに成長させるなどです。突飛な目標や夢ではなく、そのキャリアゴールを選んだ理由も大切です。今の業務から気づきを得た、今の業務と関連が強いことが好ましいです。突飛なもので理由が薄いキャリアゴールは、途中で飽きて、諦めてしまうのでは?と思われることがあります。

3.研究テーマ
これは、直接的に問うていない研究計画書もありますが、しっかり練って研究計画書に反映しましょう。多くのBSで修士論文はありますし、なにか分からないことや明らかにしたいことがあるから、多くの人はMBAを志します。これも、突飛なものではなく、ご自身のこれまでの業務に関連したテーマが好ましいです、単なる興味をテーマにしては、それに対してエネルギーを注ぎ、修士論文を仕上げきれないかもしれません。
今、自分が明らかにしなければいけないテーマを設定しましょう。
そして、テーマを設定して終わりではなく、先行研究を調べ、現時点で考えうる仮説と、どうやってそれを調べるのかまで詰めておきましょう。
テーマ設定のポイントは「抽象化」と「どう世の中に貢献できるか」です。
自社特有の事情を解明するような狭いテーマは、自社でやれば良いことです。それをもう少し抽象化して、同じように困っている他の会社や他の人が参考にできるものを設定しましょう。

◎何を見ているのか
先述した「志望動機(これまでの実績を含む)」「キャリアゴール」「研究テーマ」の3点には、一貫性が必要です。
それぞれのつながりがなければ、その場の興味や思い付きで行動する人に見えてしまいます。
例を見てみましょう。
――――――――――
例1
「私は食品メーカーで製品Aのマーケティングをしてきました。キャリアゴールは人事部に移動して、人事部門の役員になることです。研究テーマは日本のレストランにおける高齢者集客です」
例2
「私は食品メーカーで製品Aのマーケティングをしてきました。キャリアゴールはグループ企業すべての製品マーケティングを統括する部門をつくり、そこの責任者になることです。研究テーマは若者で流行した食品が全世代の認知を得るために必要な要素を明らかにすることです。」
――――――――――
例1と例2では、どちらの方が、一貫性があるでしょうか。
例1はマーケティング担当の人が人事をキャリアゴールにしています。まず、そこで疑問が生まれます。さらに、食品メーカー勤務であるのに、研究テーマでは飲食業の話になっています。ここでも疑問が生まれます。
例2は、実績、キャリアゴール、研究テーマが一貫しています。
疑問を抱いてしまうような研究計画書は読み手に混乱を与えます。そのため、読んでいても魅力的に映らなかったり、そもそも頭に文章が入ってこなかったりと印象が良くありません。
一方で、一貫した研究計画書は、スラスラと読めて、読み手は納得しながら読めるので、印象が良くなります。

一貫性がある、というのは論理的な思考ができるということに繋がります。
BSで学ぶというのは、論理的に自分の考えを話し、伝える力が必要です。
なぜなら、業界も職種も年齢も国籍も異なる人が集まって、グループで勉強する場です。「ツーカー」や「あうんの呼吸」が通用しません。
論理的思考ができる人なのかどうかを見ています。

もちろん、試験官はその他にも、いろいろな視点で見ています。受験者が求めていることがこのBSで叶えられるのか(教員や科目が学びたいことは合っているのか)、熱意はあるのかなども書面から読み取ろうと審査をしています。

◎対策は何をすればよいのか
論理的思考力を鍛えます。頭の中で考えるだけではなく、アウトプットが重要です。論理的に話し、論理的に書くことを徹底してトレーニングしましょう。
筆記試験がないBSを受ける方の中には、筆記試験対策は必要ない、と思われる方も少なくありません。対策をしないで受かる場合もありますが、それは運が良かったのか、もともと論理的に書くことができる方であったかのいずれかでしょう。
筆記試験対策は、そのまま研究計画書を論理的に書きあげる力になります。
書くトレーニングは疎かにしないことをお勧めします。


◎チューターへのありがちな質問とその回答
今回は、少し厳しい話になります。
受験勉強を始めて2、3か月経っている方で「時間がなくてこれまで勉強ができなかった。来月からやろうと思うが間に合いますか」という方が、毎年何人かいらっしゃいます。
結論としては、例えば9月下旬の秋入試に7月1日から必死で準備すれば間に合わせることはできます。
ただし「忙しい」を理由に2、3か月も勉強を放置していた方が、それをこなせるとは思えません。
BSに通うようになったら、今の受験勉強の3倍も4倍も忙しくなります。そして、受験勉強という勝負に向き合えていない方が短い準備期間であっても本気で取り組み、やりきれるとは思えません。
もし、来月から頑張ると思っている方がいれば今日から、今すぐ受験勉強に着手し、遅れを取り戻すために取り組んでください。


◎終わりに
次回は、面接対策についてです。お楽しみに!