MBAチュートリアル通信

チュートリアル通信10月号 KBSについて

2021年度MBAチュートリアル通信

河合塾KALSの大学院入試対策講座では、チューター制度を導入しています。授業での合格指導のみならず、受講生向け学習ガイダンス「サクセスチュートリアル」や個別相談(カウンセリング)などを通じて、進路・志望先に関すること、自主学習に関することなど、合格に向けてきめ細かくアドバイスをしています。以下は、MBAチューターから皆さんへのメッセージです。今後の受験対策のご参考にしてください!



◎慶應義塾大学経営管理研究科(KBS)について

今回は、チューター村上が在学しているKBSについてご紹介いたします。
以下、次の3点についてお話ししたいと思います。
①KBSの概要、②KBSの長所と短所、③入学の前後でやった方が良いと思うこと

1:KBSの概要
KBSのカリキュラムや歴史など、webサイトで入手できる情報は皆さまご存知かと思いますので、1年半在籍して感じる私の主観的な概要をお伝えできればと思います。
KBSの特徴は大きく分けて「ケースディスカッション」「同級生との濃密なやり取り」「門を叩けば開かれる」の3つであると思います。

一つ目の「ケースディスカッション」は、KBSの特徴として最初に思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。実際、入学して1年目は連日ケースディスカッションを繰り返すことになります。数字でお示しすると1年間で学んだケースの数は400を超え、1日当たりの予習時間は4〜6時間を要しました。授業では自分が立てた仮説や意見をクラスで発信し、教授や同級生から反論や補足が行われます。

授業の進行はあくまで議論が中心であり、教授は”指導”ではなく”補助”に徹します。具体的には、3時間ある授業時間のうち、教授からのレクチャーは15分〜30分ほどで、残りは全て議論に費やされました。アウトプットの機会に恵まれているため、ケースのタイトルを聞けば「こういう内容だったな...」と思い出すことができ、記憶に定着しやすいなと感じます。

二つ目の「同級生との濃密なやり取り」は、ケースディスカッションと関連した内容になります。KBSは1年次において「クラス」や「グループ」単位で学ぶことになります。クラスとは1学年をAクラスとBクラスに分割した40人〜50人の集団です。グループとは各クラスの中で更に5〜7名の集団に分けられた際の名称になります。グループで行われる活動は主に2つあります。

第一に、グループディスカッションです。1コマ3時間ある授業のうち、1時間〜1時間半はグループディスカッションになります。これは5~7人のグループ内で予め自身の意見や仮説を共有することで、意見に磨きをかける趣旨で行われます。また、グループは各学生のバックグラウンドが分散するよう組まれます。従って、学生同士で教え合う場でもあります。例えば、財務の内容が分からなければ銀行出身の同級生に質問したりもできます。

第二に、グループ発表です。グループ発表とは、授業内で課される課題について各グループで意見をまとめ、パワーポイントで資料を作り、クラス発表することです。具体的には「ケース内で登場する工場の生産性改善施策」や「社会問題を解決するビジネスプランの発表」など、内容は多岐に渡ります。グループ発表の準備は授業時間外に行うため、土日や放課後にミーティングの時間を設けて取り組みます。

クラスは学期毎に、グループはだいたい月毎に変わるので、1年経てば同級生のうち半分くらいは同じグループになったことがある人になります。このグループによる学びがあったお陰で、完全リモート下でも同級生との繋がりが強くなりました。

三つ目の「門を叩けば開かれる」とは、自分が主体的に動けば勉強や挑戦の機会に恵まれているという点です。これはどのビジネススクールにも共通して言えることかもしれませんが、私が実際に経験できたことをお話しできればと思います。

私の場合、組織論の清水勝彦先生とケースを共作する機会に恵まれました。学内の「委員長杯」というビジネスプランコンテストの出場を機に教授からケース作成のお話しを頂き、執筆することとなりました。
執筆にあたっては教授からのご指導に加えて、対象企業の経営者やアナリストへのインタビューを行う機会もあります。自分がこれまで学んできた知識に基づいて仮説を立て、インタビュー等の調査で検証をしていく経験は大変勉強になりました。ケースの共作は珍しい話ではなく、積極的に学内行事や授業へ参加していれば機会を頂ける可能性は大いにあります。
何事も自分から門を叩く姿勢を持つことが大切であると思います。

以上3点が1年半在籍してみて感じるKBSの概要になります。 

2:KBSの長所と短所

主観的になってしまうので恐縮ですが、KBSの概要を踏まえた上で長所と短所をお話しできればと思います。
■長所
長所は色々あるのですが、KBSの特徴を踏まえると2点になると思います。一つ目は、ケースを数多く学べる点です。概要の箇所でお話しさせて頂きましたが、KBSでは400を超えるケースを学ぶことになります。ケースの一つ一つが企業の失敗や成功を分析するものであり、自分の引き出しになります。ビジネスの現場で課題に直面した際に、KBSで学んだ類似するケースから示唆を得ることが出来る点がメリットです。

二つ目は、友達ができる点です。KBSは”クラス”や”グループ”単位での学びが基本であり、人と繋がる機会が豊富にあります。加えて、全日制であるため入学者はMBAだけに集中している人が多く、授業外で関わりを持つことも容易です。利害関係や立場を抜きに、幅広い年齢層の人と”友達”になれます。もちろん「親しき中にも礼儀あり」ですが、将来のことや自分の会社の課題について、フランクに意見し合える交友関係は一生の財産になると感じています。


■短所
短所は長所の裏返しで2点あると思います。一つ目は、ケースは”事例”に過ぎないという点です。鄭先生の講義にもあった話かと思いますが、事例は直接の根拠になりません。従って、単にケースを覚えるだけでは時と場合が異なる実際のビジネス現場で活用するのは難しいと感じています。ケースディスカッションでは、複数のケースに共通する”ポイント”を意識して学ぶことが重要だと思っています。

また、ケースディスカッションは議論主体で進みます。そのため、予習して自分の意見を持っていなければ学びになりません。教授からのレクチャーは僅かなので、インプットは自助努力が求められます。このようなケースディスカッションの特徴は”受け身”な方にはデメリットになり得ます。

二つ目は、同級生との濃密なやり取りです。概要や長所でも触れましたが、同級生と密に関わる機会が非常に多いです。これによって友情が芽生えることもありますが、意見や課題に対する取組み姿勢の違いから険悪になることもあります。グループで学習していると、良くも悪くも一定期間離れることができないので、グループ内で亀裂が入ると大変気まずいです。ただ、ビジネスの現場においても意見の対立は多々起こり得るので、うまい落とし所を見つける良い練習になると思います。少なくとも、真面目に勉強している人同士の対立は健全なものなので、KALSで努力している皆さんであれば大丈夫だろうと思っています。


3:入学の前後にやった方が良いと思うこと

■入学前にやった方が良いと思うこと
少し気が早いですが、KBSへの進学が決まったらやっておいた方が良いと思うことは以下の3点です。
①中学数学の復習
数学を苦手とする方は中学レベルの数学は復習しておきましょう。確率や行列など、授業の中で基礎的な理解が求められます。苦手な方は事前に準備しましょう。

②簿記の勉強
財務諸表を理解するにあたって、簿記3級程度の知識があるとスムーズになります。3級レベルの知識であれば一か月ほどの勉強で身につけられるのでお勧めです。また、基礎科目の”管理会計”という授業では、簿記3級レベルの知識が問われる中間テストが行われます。遅かれ早かれ簿記も数学も勉強することになるので、早めにやってしまいましょう。

③KALSのファンダメンタルの復習
繰り返しになりますが、KBSは基本的に授業ではなく議論を通して勉強します。従って、教授が経営学を1からレクチャーしてくれる訳ではありません。そこで、KALSで学んできたファンダメンタルの復習をお勧めします。入学前には教科書を事前に送付してもらえるので、「どの本に何が書いてあるか」を把握できる程度には一読しておくとケースの予習がスムーズに進みます。

■入学後にやった方が良いと思うこと
入学後にやった方が良いと思うことは1つだけです。それは、勉強に専念するということです。高い学費を支払って、2年という時間を使うからには勉強を頑張りましょう。そのために全日制を選んだはずです。

ここでいう”勉強”とは経営学に限らずキャリアゴール達成に必要なあらゆる知識や経験を指します。ビジネススクールでの毎日は忙しいですが、個人的には仕事の方が責任を伴う分大変だと思っています。2年後には将来の為にゆっくり勉強をする時間はありません。この機を逃したら、年単位で自分の関心があることに専念できる日々はありません。(就業経験がある方ならば私に言われるまでもないと思いますが...)

どうか、2年後の自分を後悔させないために、一生懸命勉強して頂ければと思います。学生生活はとても楽しいですし、思い出もたくさん出来ます。ただ、楽しい事ばかりに目が行って、本来の目的(キャリアゴールの達成)を見失わないようにしましょう。

KBSに限らず、ビジネススクールでの学びが皆様のキャリアゴール達成に役立つ事を心より願っております。人生の目標達成に向けて、一緒に頑張りましょう。

◎終わりに
次回は、執筆者が代わります。一橋大学大学院経営管理研究科についてです。
お楽しみに!