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チュートリアル通信第12回 税理士免除について、大学院に進学する理由

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「税法」科目免除大学院チュートリアル通信。「税法」科目免除大学院 試験合格者が試験対策や試験情報などを皆様に教えるコンテンツ。
チュートリアル通信では、大学院に合格したKALSのチューターが、試験対策や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報や、税法関連の小ネタなど、
皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。
河合塾KALS 税理士「税法」科目免除大学院 講座

第12回 税理士免除について



免除を受けることが出るのは、会計科目と税法科目の二つですが、ここでは、Kalsで開講している税法科目に絞ってご説明します。

● 研究認定の基準

①「税法の単位を4単位以上修得」
 通常、税法の教授がいればその先生の講義を取るだけで大丈夫です。

②「研究の成果が税法に関するものであること」
せっかくの修士論文の内容が認定の対象外では意味がありませんね。対象になる税法の範囲は、以下のものです。
(イ)税理士試験科目に属する税法及びそれ以外の租税に関する法律
(ロ)外国との租税に関する協定を扱う科目(租税条約など)
(ハ)その他、これらに類する科目(租税法など)
従来、財政学も認められていましたが、今は、認められないようです。また、税に関する制度研究も対象になりませんので、ご注意ください。リスクを取らず、タイトルからも税法の研究であることがわかるものにしましょう。

● 申請の手続き

 「履修要項(講義内容の確認できるもの)」のコピーなども必要になりますので、修了時まで、大事に保存しておきましょう。また、「学位論文」を完成しても「指導教授の証明書」にサインをいただけなければ申請できません。最後まで、指導教授とは、良い関係を保ちましょう。

そのほか、詳しくは、国税庁のホームページに「改正税理士法の『学位による試験科目免除』制度のQ&A」としてまとめられています。是非、一度、確認しておいてください。

大学院に進学する理由

私も大学院に行って何をするのかもわからないまま「税法免除」のためにKALSの門をたたきました。しかし、修了してみて、税理士の試験勉強と別に大学院に行って税法解釈を学ぶことの重要性に気づきました。そのあたりを少し考えてみましょう。

・税務署の下請け?

税理士試験にいくつか合格してみてわかることは、一度も、税務六法を開かなかったことです。開業後も、申告のために必要な解説書は見るもののやはり六法を見ない先生方は多くいます。確かに、条文は理解が難しく、苦労して自分で解釈するよりも、周りの先輩や当局に質問して解決し、顧客がやりたいことでも、検査や申告の際に目立つことをしないことは、一見、安全な判断のようです。でも、本当に、法律の規定上、できない判断だったんでしょうか?もし、先輩たちの慣習的な方法で損害を与えたらあなたは顧客にどう説明するのでしょうか?そして、法令解釈からの自らの判断を行わず、慣習に従って行ったアドバイスに顧客は満足したのでしょうか?
顧問先にとって税理士は頼もしいアドバイザーだと思ったのに、これでは、わざわざお金を払って税務署の下請けを雇っているようです。新しいことを試みようとする意欲的な企業経営者にとって、そのような税理士がどのように見えるんでしょうか。

顧問先の法律の盾として

2011年の国税通則法の改正により、税務調査において処分内容の理由附記が義務付けられました。近年、調査の結果受けた処分やその理由についても、納得がいかないとして不服申立ては増加しているようです。そして、課税庁側も法令の慎重な判断を行い、不要な処分は積極的に取消していることなどから、審査請求及び訴訟の件数はこの時期を境に、むしろ減少傾向を示しています。この傾向は、税理士と顧客が法令解釈を通じて、適正な判断を勝ち取った結果だといえそうです。

税理士は、適正な申告を行うことはもちろん、時には、納税者を行政から守る法律の盾としての役割も期待されているのです。
「社長。判例や規定の解釈上、従来とは違いますが、その処理で大丈夫だと思います。ただ、税務署も経験の少ない処理なので、調査で指摘され更正処分の可能性もあります。そのリスクを取りたくないなら避けるべきでしょう。しかし、事業拡大のために、必要な処理ならば、私がしっかり法律に沿った説明を行います。それでも、だめなら御社とともに堂々と争う覚悟もあります。いかがですか?」こんなことが言える、税理士になってもいいんではないでしょうか。

税法の専門家として

税法の専門家というと実務の現場以外では、補佐人が浮かびますが、その他にも、さまざまな参加の道が開かれています。不服審判所では審判官の外部登用を進め、毎年税理士や弁護士などから半数程度募集しています。また、これからの高齢化社会の中では成年後見人など税理士だからこそできる社会貢献の姿も一層期待されていますし。さらに、業務においても、景気の回復や、TPPなどの規制緩和によって海外からのインバウンドの仕事の増加も考えられます。その中では、通達などでは対応できない局面も発生しそうです。法律の専門家としての独自の判断力や当局との交渉力を育てる場としての大学院進学という視点も必要ではないでしょうか。

終りに

私の場合、大学院修了直後に免除申請し、7月第一週に無事、「免除決定通知書」が到着しました。もっと早いこともあるようですが、同じ時期に提出された方は、同じときに通知書が到着しました。
努力の結果、大学院入学が叶うと免除は既に約束されたと思ってよいと思います。むしろ、せっかくの研究がその後役立つよう、進学や研究の意義について十分検討してみましょう。



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