研究計画書 基礎編(前編)
2025年度

チュートリアル通信では、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。
研究計画書 基礎編(前編)
— これから研究計画書に挑むあなたへ —
新宿本校チューター:田中
◆ご挨拶
皆さん、こんにちは!新宿本校でチューターをしています、田中と申します。
税法大学院を受験するにあたって、ほとんどの大学院では「研究計画書」の提出が求められます。つまり、研究計画書は“合否に直結する重要書類”です。とはいえ、初めて作成する方がほとんどで、「何を書けばいいの?」「どこから始めたらいいの?」と不安に思う方も多いはず。
この連載では、前編(VOL.1)と後編(VOL.2)の2回にわたって、研究計画書の作成手順を丁寧に解説していきます。初めての方でも安心して進められるよう、実際の合格者がたどったプロセスを交えながらご紹介します。
◆研究計画書とは?
そもそも、「研究計画書」とは何を書くものなのでしょうか?端的に言えば、大学院入学後にどのような研究を行いたいか、その内容と計画をまとめた書類です。
つまり、次の3点を明確に書く必要があります。
- 何を研究したいのか?(研究テーマ)
- どの程度まで調べているのか?(現状把握)
- どのような方法で進めるのか?(研究計画)
◆研究計画書の基本構成
研究計画書には“正解”はありません。ただし、読みやすく、論理的に整理された書類には一定の作法があります。その第一歩が、項目を分類して整理することです。
一般的には、以下の6つの項目で構成すると見やすくなります。
- 志望動機
- 研究動機
- 先行研究
- 分析・検討
- 今後の研究計画
- 学習計画
◆研究テーマをどう見つけるか?
すでに「この条文を深く研究したい!」というテーマがある方は、そのまま進めて大丈夫です。一方で、「何をテーマにすればいいのかわからない」という方も多いと思います。
そんなときは、次の3つの視点から考えてみてください。
| 視点 | 自問のヒント |
|---|---|
| 研究動機 | どの条文・裁判例のどの部分に疑問を持っている? |
| 先行研究 | その条文は、どんな点で争われている? |
| 分析検討 | あなたの視点では、どこに問題意識を感じる? |
これらのいずれからスタートしても構いません。例えば、「先行研究」から入る場合は、裁判で実際に争われたテーマを追うことで、自然に研究動機が見えてくることがあります。
おすすめの方法は、『租税判例百選(有斐閣)』を通読してみること。判例ごとに主要論点が1〜4ページで整理されており、税法の重要テーマを効率よく把握できます。「これ、確かに気になる!」と思える論点に出会えたら、それがあなたの研究の入口です。
◆研究計画書の準備:情報を整理しよう
研究テーマが決まったら、次は情報整理の段階です。まず、先行研究で引用されていた判例の判旨を確認しましょう。判旨には、裁判所がどのような理由で判断を下したのかが記されています。さらに、その論点に対して研究者たちがどんな立場を取っているのかを調べましょう。数冊だけでは偏りが出るため、できれば10冊以上の文献を目安に。意見が分かれているテーマほど、研究計画書に深みが出ます。そして、集めた意見を「論点整理表」にまとめるのがおすすめです。
◆論点整理表の作り方
論点整理表とは、複数の研究者の見解を一覧で比較する表です。
- 横軸(列):主要な論点
- 縦軸(行):研究者や文献名
- どの論点が活発に議論されているか
- 誰がどんな立場を取っているか
例えば、地裁では争われていたのに、高裁・最高裁では議論されていない論点もあるかもしれません。そうした「論点の濃淡」を見極めることが、書きやすく説得力のある研究計画書につながります。
◆いよいよ作成へ
ここまで準備が整ったら、いよいよ研究計画書の執筆に入ります。ただし、最初から完璧を目指す必要はありません。まずは目次だけでも作ってみましょう。
- 志望動機
- 研究動機
- 先行研究
- 分析・検討
- 今後の研究計画
- 学習計画
例:
・なぜ疑問に思ったのか
・その問題が現代社会にどう影響しているか
を自分の言葉で書いてみましょう。内容がまだ整理されていなくても大丈夫。後からいくらでも磨けます。
◆おわりに
ここまで読み進めても、まだピンと来ない方も多いと思います。それで大丈夫です。初めての人にとって、研究計画書は「読んでもわかりにくい」ものなのです。
でも安心してください。このチュートリアル通信を書いている私自身も、かつて研究計画書を作成して税法大学院に進学し、修士論文を書き上げました。最初は誰でも迷いますが、一歩ずつ形にしていけば、必ず“自分の研究”になります。
次回の後編(VOL.2)では、先行研究・分析・今後の研究計画、そして志望動機・学習計画の書き方について、より実践的にお話ししていきます。