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研究計画書 基礎編(後編)

2025年度
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チュートリアル通信では、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。


研究計画書 基礎編(後編)
— 研究計画書を完成させよう —

新宿本校チューター:田中 

◆前編の振り返り


前編(VOL.1)では、「研究テーマの見つけ方」と「論点整理表の作り方」を中心にお話ししましたね。ここまでで、皆さんは自分なりの研究動機(=なぜそのテーマに関心を持ったのか)を整理できたはずです。
後編では、そこからさらに一歩進めて、「研究計画書を実際に形にしていく段階」を一緒に見ていきましょう。



◆①先行研究のまとめ方

「先行研究」とは、あなたが取り上げたいテーマについて、すでに他の研究者や裁判でどのような議論が行われているかを整理する部分です。
書くべき内容の目安は次の3点です。
  1. 事件の概要
  2. どんな出来事・裁判が題材になっているのかを、数行でまとめましょう。
  3. 争点
  4. どの部分で対立があったのか。あなたが取り上げる論点を明示します。(複数ある場合は「主たる争点として〇〇を検討する」と書くと自然です。)
  5. 裁判の経緯
  6. 地裁・高裁・最高裁の判断を簡潔に整理します。すべての判決を詳述する必要はなく、「どの段階でどんな判断が下されたか」を俯瞰的に書ければ十分です。
ワンポイントアドバイス:
先行研究の章は、研究計画書の中でも特に“基礎資料”の位置づけになります。「誰の・どの論文・どの判例を踏まえて考察するのか」を明確にしておくことで、次の「分析検討」パートに自然に繋げられます。



◆②分析・検討の書き方

ここが、研究計画書の“中心”であり、あなたの個性が出る部分です。先行研究で整理した論点に対し、自分の視点から分析し、考えを展開します。とはいえ、いきなり長文を書くのは大変なので、まずは「見出し」を立てて骨組みを作りましょう。

文字数が2000字程度の場合
  1. 研究動機
  2. 先行研究
  3. (1)事件の概要
    (2)争点
    (3)裁判の経緯
  4. 分析・検討
  5. (1)〇〇について
    (2)〇〇の解釈
    (3)〇〇の適用
  6. 今後の研究計画

文字数が3000字程度の場合

  1. 研究動機
  2. 先行研究
    (1)事件の概要
    (2)争点
    (3)裁判の経緯
  3. 分析・検討
  4. (1)〇〇について
     Ⅰ 趣旨・立法背景
     Ⅱ 他制度との比較
    (2)〇〇の解釈
     Ⅰ 判例と学説の差異
     Ⅱ 自身の考察
    (3)〇〇の適用
  5. 今後の研究計画

ワンポイントアドバイス:
分析・検討の章では、“どこを深掘りするか”を明確にすることが大切です。文章量よりも、「このテーマを自分の目線で掘り下げている」と伝わる構成を意識しましょう。先行研究を“並べる”のではなく、あなた自身の解釈を“差し込む”意識です。



◆③今後の研究計画を書く

この章では、分析を踏まえた上での現時点の結論と、今後の展開を書きます。
  • どの研究者の意見に共感するのか
  • どの部分がまだ明らかでないと感じているか
  • それを大学院でどう掘り下げたいのか
を簡潔に記せばOKです。

ワンポイントアドバイス:
未解明の部分があることはマイナスではありません。「今の時点でここまで明らかにできた」「今後はこの部分を深めたい」と整理できていれば、それだけで研究意欲が伝わります。



◆④文字数の調整とブラッシュアップ

全体を書き上げたら、次は「文字数調整」と「整え作業」です。
  • 文字数が少ないとき:
    → 研究がまだ浅いサイン。文献を追加して分析を厚くする。
  • 文字数が多すぎるとき:
    → 先行研究を詰め込みすぎ。要点を残して整理する。
最終段階では、1文1文を丁寧に整えることが重要です。単語を1つ削るだけで、驚くほどスッキリすることもあります。



◆⑤ 志望動機を書く

ここまででメインの研究計画は完成です。続いて、「なぜこの大学院で学びたいのか」を書きましょう。
  • 教育内容(カリキュラム・ゼミ構成)
  • 教員の専門分野
  • 研究環境(社会人学生の比率・夜間課程の有無)
など、自分の志望理由を具体的に。「先生方の研究テーマと自分の関心が重なっている」など、リサーチした上での志望理由を添えると、より説得力が増します。



◆⑥ 学習計画の書き方

学習計画では、大学院入学後にどのように学びを進めるかを書きます。形式に決まりはありませんが、次のような流れが書きやすいです。
  1. 1年次:基礎理論の再整理、ゼミ・講義でのインプット
  2. 2年次:修士論文の構想・執筆、学会発表の準備
大学院のシラバスを確認し、「自分がどう成長していくか」のイメージを描くと良いでしょう。学習計画は単なる予定表ではなく、「自分の学び方の方針書」です。



◆⑦ 作成のコツ(最終仕上げ)

ここまで仕上げたら、あと少しです。仕上げの段階では、次の2点を意識してみましょう。
  1. 見た目が整っていること
  2. - 本文:明朝体
    - 見出し:ゴシック体
    これだけで、読みやすく洗練された印象になります。
  3. 理論が一貫していること
  4. 先行研究では所得税の論点を扱っているのに、分析では法人税、結論では消費税…これでは一貫性が崩れます。“最初の論点”と“最終の結論”が自然につながっているかを必ず確認しましょう。
そして最後に、参考文献リストを付けます。研究計画書では文字数に含まれないことが多いので、安心して載せてください。



◆おわりに

ここまで前後編にわたって、研究計画書の作成ステップを一緒に見てきました。「動機 → 研究 → 分析 → 計画 → 志望 → 学習」と進めてきたあなたは、すでに合格者と同じ思考プロセスに立っています。合格のカギは、“点と点を線にすること”。自分の関心(動機)と学問的課題(研究)をつなげていくことで、計画書は一気に説得力を増します。
最後まで読んでくださってありがとうございます。次は、あなた自身の言葉で、世界にひとつだけの研究計画書を仕上げてください。応援しています。