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小論文対策

2025年度
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小論文対策
新大阪校チューター:竹村 

みなさん、こんにちは。今回は大学院入試の小論文対策について、ご一緒に考えていきましょう。


● 小論文試験の目的

多くの大学院の入学試験において小論文試験が課されていますが、その目的としては、設問の読解力と問われていることに対する記述能力を評価することにあります。記述能力の内容としては、論理的展開能力、文章構成能力、自身の意見の表現能力等が含まれます。すなわち、大学院入学後に修士論文を作成する能力があるかという点を審査しています。
これに関しては、『ケースブック租税法』や「租税判例百選」の判旨・評釈文、並びに各種テキストでの研究者の文章構成・表現方法、言い回し等を参考に真似てみるのも効果的な方法と言えるでしょう。

次に実際の過去問に対する具体的な対策について述べてみます。


● 過去問のタイプとその対策

大きく分けて、次の3つのタイプに分けられます。
  1. 用語の説明
  2. 時事的問題
  3. 事例問題
それでは、順番に見ていきましょう。
  1. 用語の説明 … ○○主義、○○原則等租税法の基本用語や訴訟で争点になるもの等用語の説明を記述するもの。
    例)
    ・租税法律主義、その中の課税要件法定主義、課税要件明確主義、合法性の原則等
     →例えば、いわゆる一行問題として「租税法の基本原則について説明して下さい」、「租税法律主義の視点から租税法の法源について論じなさい」等々
  2. ・収益計上に関する権利確定主義や管理支配基準等
    ・借用概念 …… 頻出用語です
    ・租税法の解釈のあり方、国際的二重課税、所得の帰属年度等々
     →具体的には、法人税法22条に関して「資産の無償譲渡や役務の無償提供を行った場合の法人税の課税根拠について」というように条文の解釈についての出題もあります。

    対策としては、過去の出題例や、これから出題が予想される用語について、租税法のテキストや税務会計用語辞典等を参考に自分でまとめてみることをおすすめします。
    参考)
    金子 宏他『税法入門』(有斐閣新書)や増井 良啓『租税法入門』(有斐閣)にわかりやすくまとめられています。他に、『税務・会計用語辞典』(財経詳報社)や金子宏『租税法』も参照。

  3. 時事的問題 …法や租税に関する時事的問題について説明をする問題
  4. 例えば、
    ・所有者不明の土地問題について、放置すればどのような問題が生じるのか、またその解決法について
    ・我が国の契約における問題点3点と問題解決の指針の提示
    ・我が国の夫婦の財産関係の問題点を3つ指摘し、解決策を示す 等々
    いずれも、法的問題が含まれてはいますが、普段から新聞の社説や論評の類、テレビのニュース解説などに注意しながら、法律学の基礎的事項を押さえておけば、記述できると思います。ちなみに、NHKテレビの平日19時30分からの「クローズアップ現代」(約30分間)はおすすめです。就活用の時事問題の解説本もいいかも知れません。

  5. 事例問題 … 判例の判旨を読んで、それに対する考え方を記述するもの。
  6. 対策としては、金子 宏他『ケースブック租税法』(弘文堂)、または「租税判例百選[第7版]」(別冊ジュリスト、有斐閣)を教材として用い、所得税か法人税かのどちらかを選び、下記の要領で少しずつ記述練習して下さい。また、試験の1か月半前からは、志望校の実際の過去問で練習して下さい。

    前置き(イントロ、ただしあれば記述のこと))の後、
    ①  論点(争点)抽出 ……原告(納税者)の主張と被告(課税庁)の主張を読んで、何が問題になっているのか
    ②  要件を記述(例えば、不法行為が問題となっているのならその要件)
    ③  当てはめ(具体的な事例の場合、本件がその要件に当てはまるか?)
    ④  結論及び検証(裁判所の判断や考え方が社会通念=常識に合致するか?)
    ⑤  問題点(研究者の指摘等、わかれば)
    ⑥  他の考え方も可能か否か(条件を変えた場合等)
      ここで、自分の意見・私案・提言等を記述してもよい

    ――― 以下、違法行為による所得に対する課税の是非に関する問題が複数回出されていますが、これに関しては以下のような出題が見られます。
    ア 貸金業者における利息制限法所定の利率を超過する利率で融資した超過利息分について。
    イ ポーカーゲーム等賭博行為を客を集めて継続的に行い、得た所得について。
    ウ 詐欺や背任、横領等違法行為の協力を持ち掛けられ(共謀)、その報酬として得た所得について。 

    ここでは、特にアに関して述べてみます。

    (前置き)
    「違法所得についても課税すべきか否か。社会ではこのような行為(民法では不法行為という)による所得も(申告はないものの)少なからず見受けられる。」
    ① 論点 
    「貸金業者が利息制限法所定の利率を超える利息を受け取った場合、その部分も所得税法の所得として課税対象になるのか。」
    ② 要件 
    「利息制限法1条では所定の利率を超過する部分の利息については無効とされる。」
    ③ 当てはめ
    「無効になるような所得は直ちに返還義務が生じるため、はたしてそれに対して課税すべきか。これに関しては所得税基本通達において、その基因となった行為が適法であるかどうかを問わない(ここは勉強のこと)とされ、民法等他の規制法に束縛されないものとされている。」
    ④ 結論と検証
    「したがって、超過利息分についても当然のことながら所得税を課すべきものと考える。むしろ、違法あるいは法的に無効な所得に課税しなかったら、違法行為等を助長することになる。ただし、借主から過払金返還請求がなされ、返還した場合には、その債務の確定した期、もしくは実際に返還した期の損金として処理されることになろう。」
    ⑤ 問題点
    「また、超過利息分について未収部分がある場合、(自分の意見として)元々無効なのだから未収計上できず、課税対象とすべきではない、または上記③、④の理由で、回収の蓋然性が高ければ未収計上して課税対象にすべきである」等を記述しても良いものと思います。

    少なくとも、①から④については記述することとし、上記の「 」内の文を幹に枝葉を色々と付け足して切れ味の鋭い文章にして下さい。必ずしも、上記の通り書く必要はないので、あくまで参考にして下さい。

● 傾向の把握

例えば、関西地区の大学院を例にあげると、
1のタイプは、一般入試の甲南大学(大学院社会科学研究科)、関西大学(大学院法学研究科)、立命館大学(大学院法学研究科)において出題されています。
2のタイプでは大阪学院大学(大学院法学研究科 社会人入試)が該当します。
過去には、相続法改正(配偶者居住権の新設等)についての説明や尊厳死と安楽死についての説明とそれらに対する考え方、生殖補助医療(特に、代理母はなぜ認められないのか)等々、今日の社会の様々な問題点について問われていますので、新聞・TV等にて常に関連情報を得るようにして下さい。なお、最近は出題傾向に変化が見受けられ、法的問題だけではなく、より身近な問題が出題されているようなので最近の過去問に注意して下さい。
また、3のタイプの事例問題は、大阪経済大学(大学院経営学研究科 社会人入試)で毎年出題されています。
特に、近年は違法な所得に対する課税、債務免除に対する課税、借用概念についての説明等がよく出題されています。
ヤマをかけるのは良くありませんが、傾向を把握してその分野と関連分野については、注意して勉強して下さい。ご自分の志望校の過去問については、過去5年分以上を入手の上、出題傾向を早めに把握して受験対策をして下さい。

それでは、ご健闘を祈ります。Do your best!