研究計画書の作成(前編)
2024年度
チュートリアル通信では、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。
研究計画書 基礎編
新大阪校チューター:濱中
◆ご挨拶
皆様初めまして!新大阪校でチューターをしています、濱中と申します。
税法大学院を受験する場合、ほとんどの大学院では研究計画書の提出が求められています。つまり研究計画書は、税法大学院を受験する方々にとって重要な書類となります。しかし、重要な書類にもかかわらず初めて作成する方も多いかと思います。何から書いていいかわからない、どう書けばよいかわからない等の不安が生じているかと思います。そこで前編(VOL.1)及び後編(VOL.2)の2回に跨って、研究計画書の作成方法についてお話ししていきます。
◆研究計画書とは??
そもそもですが、研究計画書とは何を書く書類なのでしょうか?
研究計画書とは「大学院入学後に行いたい研究内容と、その研究を行うための計画についてまとめたもの」ではないかと考えられます。つまり、何を研究したいのか?その研究対象を現状どの程度迄研究しているのか?その研究をどのような計画で行うのか?を記載する書類になります。
◆研究計画書の分類
前提として、研究計画書の作成に正解はありません。しかし、研究計画書や論文を作成する際には一般的な記載事項である作法というものが存在しています。まずは、見た目が重要であるということです。見た目をすっきり見やすくするために、各項目に分類する方法があります。文字数にもよりますが、研究計画書に記載する一般的な分類の項目として、
1.志望動機
2.研究動機
3.先行研究
4.分析検討
5.今後の研究計画
6.学習計画
に分類できると思います。1.志望動機と6.学習計画については、研究計画書の作成自体には直接結びつかないので、後編で触れます。
◆何を研究しますか?
気になっている条文や裁判例等が既に確定されている方は、そのまま進めて貰えれば良いと思います。しかし、特に気になる内容が現在決まっていない方もいらっしゃるかと思います。ここでは、テーマになりそうな疑問を見つける方法を記載します。
2.研究動機→どの条文のどの部分に疑問を持っていますか?
3.先行研究→条文がどう争われている?(争われているから研究されているはず)
4.分析検討→皆さんの視点ではどう写る?(何がどう問題だと皆さんは感じるのか?)
上記2.~4.どこからでも良いので、気になる部分を見つけていきます。2.~4.の全ての方法を記載するととても長くなりますので、ここでは3.先行研究から疑問を見つける方法を記載します。
3.先行研究があるということは、そもそも裁判等で争われている実績があり、研究者が疑問に感じている部分があるということです。つまりそこに論点が存在しているということになります。このような多種多様の先行研究が詰め込まれている一冊の書籍があります。それが、有斐閣から出版されている「租税判例百選 第7版」になります。この「租税判例百選 第7版」を一通り通読されることをお勧めします。「租税判例百選 第7版」は、主要な税目に関する研究が1~4ページ程に纏められています。この中から、皆さんが「確かに疑問に思う!」と思う論点を見つけることで、どの条文のどの部分に疑問を感じているのかが判明します。これが、2.研究動機になります。その後、その疑問部分に対して他の研究者の意見を分析していきます。これが4.分析検討になります。これで、研究対象が決まりました!!
◆研究計画書を作成するための準備をしましょう!!
さあ研究対象が決まりました。でもまだ論点を深堀していないので、研究計画書にどうやって書いていけばわからないことと思います。まず、先行研究で取り上げられていた、裁判の判旨を確認してみましょう。裁判の判旨とは裁判所が判決の際に言っていた内容になります。そこには、論点も詳しく記載されています。更にその論点に対して研究者の意見が記載されている文献も確認しましょう。数冊では意見が偏っている場合があり、例えば全研究者の意見が同じ意見であれば意見の対比が出来なくなってしまいますので、数十冊単位で文献を取集しましょう。そしてその意見を「論点整理表」に纏めてみましょう。
◆論点整理表とは??
裁判で争われた論点(地裁、高裁、最高裁で論点が変わっている場合もあります)で皆さんが特に疑問に思われるものを重要なものから順に、エクセルの列(A→Z)方向に記載します。一方、エクセルの行(1→100)方向には、その論点について誰がその意見を言っているのかを記載しておきます。そうすると全ての論点に触れている研究者や一つの論点のみに触れている研究者など一目瞭然になります。全ての意見を「論点整理表」に纏めたら一度「論点整理表」を俯瞰してみましょう。そうすると、議論されている論点とあまり議論されていない論点に分かれてくるかと思われます。ひょっとしたら、地裁では活発に議論されていたにもかかわらず、高裁から最高裁にかけて全く議論されずに終審している場合もあります。この場合、論点としては地裁で終了していた可能性もあります。研究計画書を作成するにあたっては、出来るだけ議論が活発な方が書きやすくなります。もう一度、皆さんの論点を「論点整理表」を使って整理してみましょう。
◆どうやって研究計画書を作成していきますか?
上記迄で「論点整理表」の作成も出来、研究計画書を作成する段階になっていると思います。しかし、この時点で、絞り込めた論点をどうやって研究計画書に記載すればよいのかという不安が生じている方も多いのではない。この時点で言えるのは、とりあえず書いてみる事です。まずは、内容自体は空欄で構いませんので、構成の目次だけ作成してみましょう!!
1.志望動機
2.研究動機
3.先行研究
4.分析検討
5.今後の研究計画(まとめ等)
6.学習計画
1.志望動機と6.学習計画は、大学院によっては別紙になっており、研究計画書の作成自体には直接結びつかないので、後回しでも良いかと思います。まず、2.研究動機を作成してみましょう。一言でも、どの位の量でも良いので、皆さんの中で固まってきている、①どの条文の②どの部分が③どう疑問に思っていて、それが④現代にどう影響しているのかを記載してみましょう。恐らく④の現代への影響に疑問を持っているので、①この条文の研究をしようと決めたはずです。これが研究動機になります。研究計画書は受験される大学院によっても文字数が違うので、この段階では文字数の多い、少ないは気にしなくても良いかと思います。最終の文字体裁を気にする段階で加除すれば良いと思います。
◆終わりに
続きは、後編(VOL.2)に記載します。
ここまで熟読されても、チンプンカンプンな方も多いかと思います。当然です。初めてのことを文章で読んでもイメージできないことも多々ありますから。しかし、このブログを書いている方達は、全員研究計画書の作成をしたことがありますし、全員修士論文の作成もしました。この経験者たちが書いているブログをイメージが出来るまで熟読して、是非参考にして貰えればチューター冥利に尽きます。