心理・チュートリアル通信「論述対策」(3)
2025年度
チュートリアル通信では、大学院に合格したKALSのチューターが、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報や、心理士事情など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。
「論述対策」について
新宿本校チューター:勝又
こんにちは!新宿校チューターの勝又です。
心理系大学院を目指して勉強に励んでいる皆さん、日々の学習、本当にお疲れさまです。
季節の変わり目で体調を崩しやすい時期かと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。
今回は、論述問題に苦手意識を持っている方に向けて、私自身の経験をもとに、少しでも参考になればと思い、この文章を書いています。
正直なところ、「論述問題は得意です!」と自信を持って言える方は、なかなかいないのではないでしょうか。特に、「自分の考えを述べなければならないのでは?」「何を書いたらいいかわからない…」というイメージから、いざ取り組もうと思っても、戸惑ってしまうことがあるかもしれません。ですが、心理系大学院の入試で求められるのは、「自分の考え」よりも、「勉強して得た知識を使って、どれだけ論理的に説明できるか」です。つまり、「知識をどれだけうまく取り入れられるか」「どれだけ筋道立てて、わかりやすく伝えられるか」が鍵になります。これは決してセンスではなく、訓練次第で必ず身につけられる力です。
私自身が論述に取り組む中で意識していた5つのステップがあります。それを意識することで、論述が苦手だった私も少しずつ書けるようになりました。これから取り組む方、今悩んでいる方の参考になれば嬉しいです。
ステップ1:過去問を分析して「形式と傾向」をつかもう!
まず、最初に大切なのは、「試験問題の特徴を知ること」です。論述が出るとは聞いていても、「実際に見たら思っていたのと違う!」というのは、よくある話です。そうならないように、志望校の過去問は必ず数年分チェックしておきましょう。
確認ポイントは以下の通りです。
①出題形式
文字数の目安・解答にかけられる時間(他の問題からおおよそを計算しましょう)。
②出題内容の傾向
心理学概論・心理学の第何回のテーマからよく出るのか。
③設問のパターン
出題の型を知っておくことで、事前に対策が立てやすくなります。
例:
【説明型】「インフォームド・コンセントの意義とその実施上の留意点について説明しなさい。」
【意見論述型】「スクールカウンセラーとして、学校内でどのような関係づくりを重視すべきか、あなたの考えを述べなさい。」
※考えを聞かれていますが知識で解ける問題です
【比較型】「精神分析療法と行動療法のそれぞれのアプローチの特徴について、対比しながら述べなさい。」
【混合型】「投影法と質問紙法の特徴を比較し、それぞれの検査をどのように使い分けるべきか考えを述べなさい。」
【事例分析型】「以下の事例を読み、クライエントの問題を、心理的・社会的・生物学的要因に分けて説明しなさい。」
*これらをあらかじめ把握しておけば、「どんな力が求められているのか」、学習の方向性もぐっと定まり、効率よく対策できます。
ステップ2:一度、何も見ずに書いてみよう!
まず過去問から1題選んで取り組んでみましょう。「今の自分はどれくらいできるか」を知ることが大切です。できれば時間を計って、本番と同じ状況を想定して書いてみてください。
目的:書けなかった部分や、あやふやな知識をはっきりさせるため
自分の思考パターンや、限られた時間でどこまで書けるかを把握するため
注意:思うように書けなくても落ち込まなくて大丈夫です。最初は予想以上に手が動かないと思いますが、それが普通です。大切なのは、その後どうやって改善していくかです。
ステップ3:「なぜ書けなかったのか」を具体的に分析しよう!
ここが最も重要なプロセスです。うまく書けなかった理由を、そのままにせず、丁寧に細かく分析してみましょう。ぜひこの段階で、大学の過去問を持って、チューターカウンセリングをご利用ください。あなたに合わせた具体的なアドバイスを提案します!
例:よくある「つまずきパターン」
①何を書いたらいいのか全く分からない場合
・別のテーマでも構わないので、参考になる解答例を見て、論述の書き方や構成のイメージを掴みましょう。→ おすすめのテキスト:河合塾KALS監修 坂井剛著「公認心理師・臨床心理士大学院対策 院試実践編」
・その問題に対して、どのような知識が求められているのかテキストや参考書を読んで整理する。
②書くべきことは分かるけど、文章にできない場合
・キーワードで覚えるのではなく、それを使って文をつくる練習をする。
※単語だけで覚えている人は要注意!「文章で覚える」ことがポイントです。
例:
×「発達障害」だけを記憶
〇「発達障害とは、主に生得的な脳の機能障害により、~といった状態である(定義)。具体的には、自閉症スペクトラム症や~などが挙げられる。知的障害との違いは~という点にある。」というように、文章で説明できるようにする。
・心理学の論述で用いる表現や言い回しは、日常会話では使わないものが多いです。初めて聞く言葉に遭遇したら、まずは真似して覚える癖をつけましょう。
③書きたい内容は頭にあるけど、文章の構成がわからない場合
・対処法: 論述の「基本の型」を身につける →これは臨床心理学論述演習の授業で扱うと思いますのでそちらをチェックしてください。
・いきなり書き始めるのではなく、構成メモを作ることも効果的です。
ステップ4:添削してもらい、フィードバックを受けよう!
書いた文章は、必ず第三者にチェックしてもらうようにしましょう。
方法:先生やチューターに添削してもらう。
→修正した後に再度確認してもらう。
→そうして、納得のいく完璧な解答を一つ仕上げる。
この過程を通じて、類似の問題にも柔軟に対応できる力が身につきます。
ステップ5:自分の書き方のクセを把握しよう
繰り返し練習することで、自分特有の論述の傾向が見えてきます。
例えば、文字数が多くなりすぎる傾向がある場合は、要点をまとめ、短くても伝わる表現方法を練習しましょう。
まとめ
このように、論述試験は、繰り返し取り組むことで着実に力がついていきます。書くことで知識が整理され、書けなかったことで課題が明確になり、フィードバックによって表現力が磨かれるでしょう。この力は、大学院に進学した後も長く活かせる大切なスキルです。焦らず、一歩ずつ着実に進めましょう。行き詰まったときは、ぜひチューターカウンセリングをご活用ください。一緒に考えていきましょう。