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心理・チュートリアル通信「研究計画書について」(1)

2023年度

チュートリアル通信では、大学院に合格したKALSのチューターが、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報や、心理士事情など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。


研究計画書について(1)

新宿本校チューター:篠原 
2023年度の春期講座が始まり1か月ほど経ちますが、KALSでの勉強には慣れてきましたか?少しずつ疲れもたまってくる頃ですから、体を休めながらそれぞれ準備を進めていきましょう!

今回のチュートリアル通信では、研究計画書に取り掛かるときや、作成中に気になるポイントを乗り越える方法、その名も「研究計画書作成マインド(篠原命名)」をご紹介します。私自身の経験や、チューターとして受講生の皆さんとのお話の中でよくご相談頂くことを踏まえています。これから研究計画書を作成する皆さん、今まさに研究計画書を作成している皆さん、出願が近づいてきてドキドキしている皆さんにお届けできたら嬉しいです。
研究計画書概要講義をご覧いただいてからお読み頂くのがおすすめです!概要講義を視聴後に個別指導も受けられるようになりますから、まだの方は是非ご覧くださいね。

研究計画書作成マインド 概要
  1. 研究計画書に取り掛かるときのモチベーションの保ち方
    - モチベーションを保つために
    - モチベーションが下がりそうな困りごと
  2. 作成・推敲中のモチベーションの保ち方


1.研究計画書に取り掛かるときのモチベーションの保ち方

研究計画書に取り掛かるとき、「どうやって決めたらいいんだろう、なににしたらいいんだろう…決められない~!わからない~!」となると、モチベーションを保つのも大変だと思います…(私がそうだったので)。特にテーマ決めについては多くの方とお話することが多く、みなさんが悩むポイントのようです。 ここでは、計画書に取り掛かるときにモチベーションを保つためにお伝えしておきたいこと&よくご質問いただく、モチベーションが下がりそうな困りごとについてお話させて頂きます。
  1. モチベーションを保つために
    臨床心理学で博士後期課程まで進まれる方も多くいらっしゃいますが、それ以上に修士課程/博士前期課程を修了して働くという方も多いかと思います。「研究者を目指していないけれど、どうやって修士論文に向き合えばいいんだろう」と悩む方も多いかもしれません。
    研究計画書に取り組む際には、「どうして心理療法士を目指そうと思った?」「どんなことに関心がある?」という自分への問いかけをすることをお勧めします。これは、テーマ決めの手段の一つでもあります。心理臨床に携わろうとする当初の関心を言葉にしておくと、「こういうことが知りたかったんだった。」「こういう援助を目指しているんだった。」など、テーマ決めだけでなく、研究計画書作成中、大学院入試の勉強中も、更に実際に修士論文を進めている間にも、更に更には資格試験や、現場に出てからの モチベーションをも支えてくれるものになります。目標を時折思いだすことで、モチベーションに繋げていきましょう。
    また「このテーマはどんなふうに役に立つかな?」と考えてみることもお勧めです。心理療法士として現場に出てClの援助に携わる際、「エビデンスに基づいた援助を提供できるように」というだけでなく「こんな現場ではこんな風に役立つかも。別の現場ではこうかな...」など想像を膨らませておくと、研究へのモチベーションも自ずと高まる...かも。
    ちなみに、上記の3つの問いは面接対策としても役立つ作業ですから、受験準備中のどこかのタイミングで行いましょう。

  2. モチベーションが下がりそうな困りごと
    以下のご質問はよく頂くものですが、答えがわからなくてモチベーションが下がってしまうかも…と考えられるため、まとめさせていただきます。

    どこまで先行研究を読めばいいんだ…
    →理想は「全部」ですが、人間には限界があるものです。「ご自身の研究計画を支えるだけの知識と先行研究があれば、ひとまずはOK」「大事な論文と、最近の論文に目を通したらひとまずはOK」などと、小さな合格ステップを作っておくと、モチベーションが下がらずに済むかもしれません。もちろん、修士論文を完成させるにあたり、最終的には「入手できた必要な論文ほとんど全部」を時間の限り読むことになります。研究計画書という準備期間と、修士論文を提出するまでの時間で、じっくり先行研究を読んでいきましょう。
    • どこまで先行研究を読めばいいんだ…
      →理想は「全部」ですが、人間には限界があるものです。「ご自身の研究計画を支えるだけの知識と先行研究があれば、ひとまずはOK」「大事な論文と、最近の論文に目を通したらひとまずはOK」などと、小さな合格ステップを作っておくと、モチベーションが下がらずに済むかもしれません。もちろん、修士論文を完成させるにあたり、最終的には「入手できた必要な論文ほとんど全部」を時間の限り読むことになります。研究計画書という準備期間と、修士論文を提出するまでの時間で、じっくり先行研究を読んでいきましょう。
    • どうやって先行研究を探したらいいの?文献にアクセスできない!
      →まずはGoogle Scholar、Google検索、国立国会図書館、CiNii articlesなど、無料で誰でもアクセスできるリソースをフル活用しましょう!大学等に通われて いた方は、大学図書館の卒業生利用ができるかどうかを確認するのも一つの手です。また、検索キーワードを洗い出しておくことも大切です。なかなか思いつかない/ヒットしないときには、PCの前で考えるより、少しリラックスした状態でいろいろと考えを広げてみましょう。他の人にキーワードを聞いてみることもお勧めですよ。
    • 卒論と修論の違いって?どんなレベルのものを書けばいいの?尺度はどんなものを使ったらいい!?分析ってどういうのがいいの…!?
      →「修論のほうが卒論より難しそう、レベルが高そう」というイメージは何となくありますよね。臨床心理学の研究で最も大切なのは「誰かの心の困りごとの役に立つこと(臨床的意義があること)」。ただ、すぐに役に立つものでなくてもいいのです(すぐに役に立つ修論ができたら、超人)。研究は一つ一つ進みます。これまでの先行研究をたくさん読んだうえで、こういったことが分かったら、あんなことに役立てられるんじゃない?と提案できることが大切です。また、研究の目的を遂げられる方法(尺度や分析)を使うことが大切です。卒論よりも、「研究の目的を達成するためにはどうしたらいいか?」と手段を厳密に考えることも、修論の大切さだと思います。

  3. 総じて、研究には終わりがないものです。自分で目標を作って進めることが、モチベーションを保つ秘訣ではないかと考えます。
2.作成・推敲中のモチベーションの保ち方

チューター相談を通じた個人的な推測ですが、研究計画書作成中や推敲中に最もモチベーションが下がりそうな心配事は「これで突っ込まれない?完璧かな? 」という不安かと思っています。
一番最初にお伝えしたいのは「完璧で突っ込まれない研究計画書はない」ということです。
重なりますが、研究には終わりがありません。わからないこと、あたらしいことがあるから、それを知り、さらにわからないことを明らかにしたり、得られた結果を更に活かすために研究があるのだと思います。
さらに、人の見方は十人十色です。9人に聞いても質問が出なかったとしても、10人目に聞いたら全然違う視点からの質問が出ることもあります。
そのため、研究計画書はたくさん詰めても、なにかしらの疑問点が生まれます(面接等で実際に聞かれるかどうかは別として)。
完璧であって質問が出ないことがよいのではなく、また答えられないことが悪いことではありません。「これまでの研究あるいは今の自分には何がわかっていて、なにがわかっていないのか。わかっていないとしたら、どう推測できるのか。」が話せることが大切です。
わからないところはこれからわかるようにしていけばいいのですから、誠実に努めて いきましょう。
こんな風に考えておくと、研究計画書作成中や推敲中のモチベーションが保たれるかな?と思います。



以上、研究計画書作成のためのモチベーション維持についてお話しました。
ただし、モチベーション維持の方法も、十人十色。
先生やチューター、友人、いろんな人に聞きながら、研究計画書を作成してみてくださいね。研究計画書指導やチューター相談もご活用ください