心理・チュートリアル通信「研究計画書について」(2)
2023年度
チュートリアル通信では、大学院に合格したKALSのチューターが、勉強法や参考図書、研究計画書について、各大学院の様々な情報や、心理士事情など皆さんに有益となるようなコンテンツをお送りしていきます。日々の勉強の合間の息抜きとして、是非ご覧になってみてください。
研究計画書について(2)
新大阪校チューター:越川
研究計画書の「書く準備」どこまで出来ていますか?皆さんこんにちは。新大阪校の心理系チューターの越川です。
今回は研究計画書を書くための「準備」に注目してみたいと思います。
この記事は、以下のような方におすすめです。
- 研究計画書を書くためにどんな準備をしたら良いかわからない。
- 研究計画書を書き始める前に大まかにどのくらいの時間が必要かを知りたい。
- 研究計画書について何をチューターに相談したら良いかわからない。
目次
- いつまでに完成したら良いの?
- 計画書に必要なタスク
- どのくらいの時間がかかる?
- 研究計画書作成とチューターの活用
いつまでに完成したら良いの?
志望校の願書の提出期間はいつからいつまで?
受講生から相談される内容に、「いつまでに計画書を書いたら良いのかわからない」というものがあります。この質問に答えるためには、その質問者に聞かないといけないことがあります。
それは…「志望校はもう決まっていますか?」です。
研究計画書は志望校へ提出する願書の資料の一つです。ということは、志望校の願書提出に間に合うように作成する必要があります。ではその時期はいつか?そうです。志望校が決まっていないと具体的な日程がわかりません。募集要項を確認すると願書の提出期間が載っています。この提出期間に間に合うように研究計画書を作成する必要があります。
去年の募集要項を参考に完成目標日を設定する
願書が出てから研究計画書を書き始めたら良いや!と思う方もいらっしゃるかもしれません。けれど、それでは間に合わないことの方が多いと思います。早め早めの準備をするために去年の願書を確認して、提出期間から目標日を設定しましょう。
研究計画書に必要なタスク
研究計画書を「書く準備」のために、まずは細かくタスクを分けてみましょう。
①テーマを決める
まずは研究計画書のテーマを決めます。自分の興味のある内容や、志望校先の教員が指導可能な内容がテーマになることが多いです。
②先行研究を調べる
自分の興味のあるテーマではどんな研究がされているのか?それを把握するために先行研究を調べます。研究計画書を書くためには興味のあるテーマを具体的にする必要があります。ここがふんわりしていると研究計画書を書く段階でとても苦しくなります。
③参考にしたい論文を見つける
「こんな感じですすめていきたい!」というような、自分の研究計画書に参考にしたい論文を見つけます。そうすることで、先行研究としてこの論文を文章に盛り込んだり、方法を参考にしてみたり、と研究計画書を作成するときに役立ちます。
④方法を決める
研究計画書ではこれからどんな方法で研究していくのか、具体的な方法を考えて記載する必要があります。研究方法は何を用いるのか?心理尺度は何を使うのか?対象は?分析方法は?倫理的配慮は?これらのことを一つずつ決めていく必要があります。
⑤志望校の書式に合わせて計画書を書いてみる
まずは字数を気にせず論の筋が通るように書いてみることをお勧めします。けれど、志望校によって研究計画書の書式は異なります。少ない文字数で書かないといけないところもあれば、志望動機も同じ文章の中に含めて書くことを求められたり、A4で2枚分必要だったりとさまざまです。自分の志望校の募集要項をよく確認して、それに合わせて書いていきましょう。
⑥第三者に見てもらう
自分で書いた文章を誰か別の人に読んでもらうことは重要です。自分の中では筋が通っていることでも、人によっては「?」ということもあったりします。より良い文章にするために必要なステップです。
⑦修正
指摘を受けた部分を修正する作業です。場合によっては研究計画書の体裁を保てていない場合もあったりして、全面改訂を必要とする場合もあります。
どのくらいの時間がかかる?
ではどのくらい研究計画書に時間を割けば良いのでしょうか?
その答えはご自身がどのくらい「書く準備」が出来ているかによって変わってきます。
続いては、「書く準備」として必要なことを挙げてみました。一つずつみていきましよう。
興味のあるテーマが大枠で決まっている/志望校が決まっている
タスク①でもあげたように、何よりここが決まらなければ先に進めません。また志望校決定は大学院受験全体においても大切な事柄ですので、まだ決めきれない人は優先的に取り組まれることをお勧めします。
興味あるテーマについて具体的なキーワードを出して説明できる(仮説が決まっている)
研究計画書として仕上げるためにはご自身の興味のあるテーマの中で、どんなことを明らかにしたいのかを明確にする必要があります。このためには自分の興味がある分野で何が分かっていて何が課題なのかが説明できないといけません。単に「親子関係について興味があります」だけでは十分ではなく、「父親への信頼感が男性への信頼関係に及ぼす影響を検討したいです」というように、より具体的に、もっというと「Aという尺度の得点が高い群と低い群でBという尺度の得点に違いがあるかを調べたい」というところまで落とし込む必要があります。タスク②でもあるように、ここがはっきりしないと先に進みません。
卒業論文作成で心理学の論文を検索した経験がある
自分の興味をより具体的にするためには先行研究を探して情報を整理する必要があります。そのためには先行研究の探し方や論文の入手の仕方を知っている必要があります。タスク②と③を達成するために必要です。
アカデミックライティングについて知っている、自分でも文章を書いたことがある
研究計画書はエッセイや感想文ではありません。これらを書くためにはそのお作法を知る必要があります。研究計画書を書くためのルールに準じて文章を作成するためにアカデミックライティングについて学び、文章を書いてみる必要があります。
解析方法や研究方法について知っている
タスク④にあるように、自分が立てた仮説を検証するために、その研究方法を決める必要があります。その際に必要なのが解析方法や研究方法です。せっかくテーマが良くても、この研究方法が荒唐無稽だと合格につながる研究計画書にはなりません。適切な方法を用いる必要があるため、その基礎知識として統計や研究法を学ぶ必要があります。
研究計画書の「書く準備」セルフチェック
今挙げた項目について、自分の状況を振り返ってみましょう。各項目を「◯…問題ない」、「△…自信がない」、「×…知らない、決まっていない」で評価してみましょう。
…どうでしょうか?具体的な時間までは示すことは難しいですが、大まかに×や△が多ければ多いほど準備するための時間が必要になります。
まず研究計画書を書く前に何から始めたら良いか分からない!という方は上記のタスクやチェックリストを参考に、自身の状況を確認してみてください。
研究計画書作成とチューターの活用
これまで見てきた通り、研究計画書は書くための準備をいかにしていくかが重要です。タスクも多いため、一人で進めていると、完成までの道のりの途中で路頭に迷うこともあるかと思います。そんな時はチューターのカウンセリングをぜひ活用してください。チェックリストの回答別にどんなふうに活用できるか例を挙げてみたいと思います。
◯が多い方
ある程度「書く準備」はできています。あとは実際に書いてみましょう。上記のタスクの5-7の部分でチューターを活用していただくのが良いかと思います。
△が多い方
自信がない部分に関してチューターに聞いてみましょう。自信がないポイントが明確であれば、その部分を重点的に取り組むことで研究計画書の完成に近づきます。
×が多い方
研究計画書を「書く準備」が十分に整っていないようです。志望校や興味のある研究テーマの決定などを早急に行う必要がありそうです。一人ではなかなか決めることができない!という方もいらっしゃると思います。まずはこの部分についてチューターに相談するのが良いかと思います。
いかがでしたでしょうか?
せっかくKALSを受講したのであれば、授業だけでなく、チューターのカウンセリングも上手に活用して効率よく質の高い研究計画書を作成していただけたらと思います。皆さんのご利用をお待ちしております!